増える訪問看護、消える訪問介護——在宅の両輪で進む、正反対の淘汰|訪問看護は新規開設2,487件で過去最高、訪問介護は倒産91件・空白地帯100自治体超

Summary
在宅を支える両輪、訪問看護と訪問介護が、いま正反対の方向へ動いている。訪問看護は稼働数18,743件・15年連続増、新規開設は過去最高の2,487件。一方、訪問介護は2025年の倒産が91件と突出し、空白地帯は100自治体を超えた。だが訪問看護もまた、廃止・休止が過去最高を更新している。この非対称が訪問看護の経営に何を意味するのか、検証可能なデータで対比し直視する。
在宅医療・介護を支える両輪がある。訪問看護と訪問介護だ。医療的なケアを届ける訪問看護と、食事や排せつ、入浴といった生活を支える訪問介護。多くの在宅療養者は、この二つのサービスを同時に受けながら、住み慣れた自宅での暮らしを続けている。
ところが今、この両輪は、まったく正反対の方向へ動いている。片方は、過去最高のペースで数を増やしている。もう片方は、過去最多のペースで市場から消えている。
本稿では、訪問看護と訪問介護という二つのサービスの、対照的な現在地を、検証可能なデータで比較する。そのうえで、この非対称が、訪問看護の経営にとって何を意味するのかを考えたい。
対比1:一方は増え、一方は消える
まず、事業所数の動きを見る。
訪問看護は、増えている。一般社団法人全国訪問看護事業協会の「令和7年度 訪問看護ステーション数調査結果」(2025年6月公表)によれば、2025年4月1日時点の全国の訪問看護ステーション稼働数は18,743件。前年から1,414件増え、前年比108%となった。稼働数は15年連続で増加している。2012年以降のこの13年間で数は約3倍に膨らみ、年平均成長率は8.8%に達する。前年度中に新規開設されたステーションは、過去最高の2,487件だった。
一方、訪問介護は、消えている。東京商工リサーチの調査によれば、2025年の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産は176件と、過去最多を2年連続で更新した。中でも訪問介護は91件と突出し、3年連続で最多を更新している。倒産だけではない。倒産以外で事業を止める「休廃業・解散」も2025年は653件と過去最多で、そのうち訪問介護は465件、全体のおよそ7割を占めた。
数字が示すコントラストは鮮明だ。同じ「在宅を支えるサービス」でありながら、訪問看護は新規参入が活発化し、訪問介護は淘汰が加速している。これが、両輪の現在地である。
対比2:「消える」訪問介護、「増えながら消える」訪問看護
ただし、ここで一つ、注意深く見ておくべき点がある。訪問看護は本当に安泰なのか、ということだ。
結論から言えば、訪問看護の「増加」の裏側では、静かに別の現象が進んでいる。同じ全国訪問看護事業協会の令和7年度調査によれば、2024年度中に廃止となった訪問看護ステーションは886か所、休止は355か所にのぼる。この廃止・休止の数は、新規開設と同様に、過去最高を更新している。前年度(廃止701か所、休止291か所)と比べても、明確に増えている。
つまり、訪問看護で起きているのは、単純な右肩上がりではない。「新規開設も過去最高、廃止・休止も過去最高」という、二極化だ。数多くのステーションが生まれる一方で、それに迫る数のステーションが、静かに退場している。廃業率で見ると、訪問看護はおよそ5%台で推移している。
訪問介護が「消える」段階にあるとすれば、訪問看護は「増えながら、その足元で消え始めている」段階にある。表面の総数の増加が、この足元の退場を覆い隠している。両者の違いは、淘汰の有無ではなく、淘汰が総数の増加に隠れて見えるかどうかにある。
対比3:なぜ、明暗が分かれるのか
では、なぜ両者の明暗はここまで分かれるのか。制度と報酬の構造に、大きな理由がある。


