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訪問看護

訪問看護は「看護が主体」でなければならない——リハビリ職の訪問に導入された「3つの減算」が問うもの|セラピスト訪問の増加と、報酬改定が迫る事業モデルの転換

2026年7月18日(更新: 2026年7月18日)·約7分で読めます
訪問看護は「看護が主体」でなければならない——リハビリ職の訪問に導入された「3つの減算」が問うもの|セラピスト訪問の増加と、報酬改定が迫る事業モデルの転換

Summary

訪問看護をめぐって、根深い論争が続いている。「訪問看護」を掲げながら、実態はリハビリが主体になっている事業所をどう扱うか、という問題だ。2024年度改定で理学療法士等の訪問に「3つの減算」が導入され、2026年度改定でも見直しが続く。リハビリ職側からは影響への懸念も強い。セラピスト訪問の増加という構造と、報酬改定が迫る事業モデルの転換を、経営の視点から直視する。

目次6項目⌄
  1. 01「看護」を掲げるステーションで、リハビリ職が増えてきた
  2. 02なぜ、それが問題とされるのか
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  • 03国が出した答え —「3つの減算」
  • 04現場は、今も揺れている
  • 05経営者は、この構造をどう読むべきか
  • 06「訪問看護とは何か」が、問われている
  • 訪問看護をめぐって、静かに、しかし根深い論争が続いている。

    「訪問看護」という看板を掲げながら、その中身が、実態としてリハビリテーション中心になっている事業所をどう扱うか、という問題だ。この論争に対して、国は2024年度、そして2026年度の報酬改定で、「減算」という明確な形で、答えを出しつつある。

    これは、単なる報酬の技術的な話ではない。「訪問看護とは、何をするサービスなのか」という、事業の根幹に関わる問いである。本稿では、この構造を、経営の視点から直視したい。

    「看護」を掲げるステーションで、リハビリ職が増えてきた

    まず、事実関係を整理する。

    訪問看護ステーションには、看護師だけでなく、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といったリハビリ職——セラピストを配置することができる。そして、これらのセラピストが、訪問看護という枠組みの中で、利用者の自宅を訪ねてリハビリを提供する。制度上、これは「訪問看護」として算定される。

    近年、このリハビリ職による訪問看護の単位数と、その割合は、増加傾向にある。厚生労働省も、報酬改定に向けた資料の中で、この点を指摘してきた。

    そして、この増加の先に、一つの実態が生まれた。看護師による訪問よりも、リハビリ職による訪問のほうが多い事業所である。つまり、「訪問看護ステーション」という名でありながら、その活動の主体が「看護」ではなく「リハビリ」になっている事業所が、少なからず存在するのだ。

    なぜ、それが問題とされるのか

    なぜ、これが問題視されるのか。

    理由は、制度上、訪問看護は、あくまで「看護」を主体とするサービスだからだ。医療的な観察や管理、処置、療養上の世話。そして、24時間の対応や、看取り。これらが、訪問看護に本来求められる役割である。リハビリは、その看護業務の一環として提供されるもの、という位置づけになっている。

    リハビリ中心のステーションが増えることには、いくつかの懸念が指摘される。一つは、看護を必要とする重症者への対応力が、事業所に育ちにくくなるという点だ。もう一つは、本来、訪問リハビリテーションという別のサービスが担うべき役割との、線引きが曖昧になるという点である。

    国が持っているのは、「訪問看護に求められる役割に基づいたサービスが、適切に提供されるようにする」という問題意識だ。看護師の役割を明確にし、質の高いサービスの提供を促す。それが、一連の見直しの狙いとされている。

    国が出した答え —「3つの減算」

    この問題意識が、具体的な形になったのが、令和6年度(2024年度)の介護報酬改定である。リハビリ職による訪問看護に対して、複数の減算が導入された。現場では、これらは「3つの減算」とも呼ばれている。

    一つ目は、体制に着目した減算だ。前年度において、セラピストによる訪問回数が、看護職員による訪問回数を上回っており、かつ、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算のいずれも算定していない事業所。こうした事業所は、基本報酬が減算される。これは、看護の提供体制を伴わないまま、リハビリが主体となっている事業所を、正確に狙い撃ちにした設計だと言える。

    二つ目は、頻回の訪問に対する減算だ。1日に2回を超えてリハビリの訪問を行った場合、その分の報酬は10%減算される。要支援の方に対しては、減算率は50%に及ぶ。

    三つ目は、長期の利用に対する減算だ。リハビリの提供が12か月を超えて続く場合、報酬が減算される。

    さらに、医療保険による訪問看護においても、セラピストの訪問を週に4日以上提供した場合、4日目以降は、看護師が訪問する場合よりも報酬が1,000円低くなる仕組みが設けられている。

    いずれも、看護の提供体制を欠いたまま、あるいは頻回・長期にわたってリハビリを提供する形を、報酬面から抑制しようとするものである。

    現場は、今も揺れている

    ただし、この見直しが、すんなりと受け入れられているわけではない。論争は、現在も続いている。

    この減算に対しては、リハビリ職の側から、強い懸念が示されている。日本理学療法士協会や訪問リハビリテーション振興財団は、「訪問看護における理学療法士等の訪問における3つの減算に関する利用者等への影響調査」を実施した。回答期限は2026年2月末とされ、訪問看護ステーションの経営者・管理者に協力を呼びかけている。制度が導入された後も、その影響を検証しようという動きが続いているのだ。

    懸念の中心にあるのは、在宅でリハビリを必要とする利用者への影響である。訪問看護でリハビリを受けている利用者を介護度別に見ると、「要介護2」が22.2%で最も多く、次いで「要介護5」が16.2%となっている。中等度の方を中心に、幅広い層がリハビリを利用している。減算によって、こうした利用者への在宅リハビリの担い手が減るのではないか、という懸念である。

    一方で、「訪問看護は看護が主体である」という制度の理念からすれば、今回の見直しには筋が通っている、という見方も根強い。リハビリの価値を否定するのではなく、訪問看護と訪問リハビリテーションの役割分担を明確にすべきだ、という立場である。2026年度の改定でも、関連する運用や疑義解釈が続けて示されており、この論争は、まだ決着していない。

    経営者は、この構造をどう読むべきか

    では、訪問看護ステーションの経営者は、この構造をどう読むべきか。

    まず、直視すべき現実がある。リハビリを中心としたモデルで規模を拡大してきた事業所にとって、この一連の減算は、収益への直接の打撃となりうる、ということだ。看護の提供体制が薄いまま、セラピストの訪問で事業を成り立たせてきた事業所ほど、その影響は大きい。

    そして、国が求めているのは、看護の提供体制の強化にほかならない。看護師を確保すること。緊急時の対応、特別な管理、看護体制の強化といった、看護ならではの機能を備え、それに応じた加算を算定できる体制を整えること。重症の利用者に対応できる力をつけること。減算を避けるための要件は、つまるところ、「看護を主体に据えているか」を問うものになっている。

    言い換えれば、制度は、「リハビリで訪問回数を稼ぐ」モデルから、「看護を主体に据える」モデルへの転換を、事業所に迫っている。これは、訪問看護という事業の、本来あるべき姿への回帰を促す圧力だと読むこともできる。

    「訪問看護とは何か」が、問われている

    この論争の根底にあるのは、結局のところ、「訪問看護とは、何をするサービスなのか」という問いだ。

    看護を主体とし、リハビリはその一環として位置づける。国は、この理念を、報酬という具体的な手段を通じて、徹底しようとしている。それは、リハビリの価値を軽んじるものではない。在宅でのリハビリは、多くの利用者にとって欠かせないものだ。問われているのは、その担い手をどう分担するか——訪問リハビリテーションという別の枠組みで担うべきものは、そちらで担う、という役割の整理である。

    減算という手段の是非については、評価が分かれるだろう。だが、国が示した方向そのものは、明確だ。訪問看護は、看護が主体でなければならない。看護の提供体制を持たないままリハビリを主体とする事業モデルは、これから、制度的な逆風の中に置かれ続けることになる。

    そのとき問われるのは、単なる収益ではない。「訪問看護」を名乗る、その看板に、実態が伴っているかどうかだ。自らの事業所が、看板どおりの「看護」を提供できているか。経営者は、この問いから、目をそらすことはできない。

    #訪問看護#理学療法士#リハビリ#介護報酬改定#減算#経営#セラピスト#訪問リハビリ
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    執筆者

    宮木

    訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師

    大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表

    小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。

    保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー

    ※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

    2026年8月14日