訪問看護は「看護が主体」でなければならない——リハビリ職の訪問に導入された「3つの減算」が問うもの|セラピスト訪問の増加と、報酬改定が迫る事業モデルの転換

Summary
訪問看護をめぐって、根深い論争が続いている。「訪問看護」を掲げながら、実態はリハビリが主体になっている事業所をどう扱うか、という問題だ。2024年度改定で理学療法士等の訪問に「3つの減算」が導入され、2026年度改定でも見直しが続く。リハビリ職側からは影響への懸念も強い。セラピスト訪問の増加という構造と、報酬改定が迫る事業モデルの転換を、経営の視点から直視する。
訪問看護をめぐって、静かに、しかし根深い論争が続いている。
「訪問看護」という看板を掲げながら、その中身が、実態としてリハビリテーション中心になっている事業所をどう扱うか、という問題だ。この論争に対して、国は2024年度、そして2026年度の報酬改定で、「減算」という明確な形で、答えを出しつつある。
これは、単なる報酬の技術的な話ではない。「訪問看護とは、何をするサービスなのか」という、事業の根幹に関わる問いである。本稿では、この構造を、経営の視点から直視したい。
「看護」を掲げるステーションで、リハビリ職が増えてきた
まず、事実関係を整理する。
訪問看護ステーションには、看護師だけでなく、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といったリハビリ職——セラピストを配置することができる。そして、これらのセラピストが、訪問看護という枠組みの中で、利用者の自宅を訪ねてリハビリを提供する。制度上、これは「訪問看護」として算定される。
近年、このリハビリ職による訪問看護の単位数と、その割合は、増加傾向にある。厚生労働省も、報酬改定に向けた資料の中で、この点を指摘してきた。
そして、この増加の先に、一つの実態が生まれた。看護師による訪問よりも、リハビリ職による訪問のほうが多い事業所である。つまり、「訪問看護ステーション」という名でありながら、その活動の主体が「看護」ではなく「リハビリ」になっている事業所が、少なからず存在するのだ。
なぜ、それが問題とされるのか
なぜ、これが問題視されるのか。
理由は、制度上、訪問看護は、あくまで「看護」を主体とするサービスだからだ。医療的な観察や管理、処置、療養上の世話。そして、24時間の対応や、看取り。これらが、訪問看護に本来求められる役割である。リハビリは、その看護業務の一環として提供されるもの、という位置づけになっている。
リハビリ中心のステーションが増えることには、いくつかの懸念が指摘される。一つは、看護を必要とする重症者への対応力が、事業所に育ちにくくなるという点だ。もう一つは、本来、訪問リハビリテーションという別のサービスが担うべき役割との、線引きが曖昧になるという点である。
国が持っているのは、「訪問看護に求められる役割に基づいたサービスが、適切に提供されるようにする」という問題意識だ。看護師の役割を明確にし、質の高いサービスの提供を促す。それが、一連の見直しの狙いとされている。
国が出した答え —「3つの減算」
この問題意識が、具体的な形になったのが、令和6年度(2024年度)の介護報酬改定である。リハビリ職による訪問看護に対して、複数の減算が導入された。現場では、これらは「3つの減算」とも呼ばれている。
一つ目は、体制に着目した減算だ。前年度において、セラピストによる訪問回数が、看護職員による訪問回数を上回っており、かつ、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算のいずれも算定していない事業所。こうした事業所は、基本報酬が減算される。これは、看護の提供体制を伴わないまま、リハビリが主体となっている事業所を、正確に狙い撃ちにした設計だと言える。


