増えているのは、子どもの訪問看護——在宅の医療的ケア児、17年で倍増の約2万人|訪問看護の利用者で最も伸びているのは10代、高齢者だけではないもう一つの現場

Summary
訪問看護と聞くと高齢者を思い浮かべる方が多いはずです。けれど今、訪問看護の現場で静かに増えているのは子どもたち。在宅で暮らす医療的ケア児は全国約2万人で、17年ほどで倍増しました。訪問看護の利用者でも、最も伸びているのは10代です。医療的ケア児とは何か、なぜ増えているのか、小児の訪問看護は大人とどう違い、家族をどう支えるのか。訪問看護の「もう一つの現場」を、データとともに整理してお届けします。
「訪問看護」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、高齢者のお宅を看護師が訪ねる光景ではないでしょうか。実際、訪問看護を利用する方の多くは高齢者です。けれど今、その訪問看護の現場で、静かに、けれど確かに増えている利用者がいます。子どもたちです。
在宅で医療的ケアを受けながら暮らす子ども——「医療的ケア児」。その存在と、彼らを支える「小児の訪問看護」について、今回はデータとともに整理してお届けします。訪問看護のもう一つの現場を、知っていただければと思います。
「医療的ケア児」とは — 在宅で約2万人
まず、「医療的ケア児」という言葉を整理しておきましょう。
医療的ケア児とは、医学の進歩を背景に、NICU(新生児特定集中治療室)などに長期間入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアが日常的に必要な児童のことをいいます。2021年に施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」では、日常生活や社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを必要とする、18歳未満の子ども(および高校などに在学する18歳以上の者)と定義されています。
厚生労働省やこども家庭庁の資料によると、在宅で暮らす医療的ケア児(0〜19歳)は、全国で約2万人と推計されています。
この数は、増え続けています。2005年時点では約1万人と推計されていましたが、2022年にはおよそ2万人へと、この17年ほどで約2倍になりました。
なぜ、増えているのでしょうか。その背景には、医療の進歩があります。NICUをはじめとする周産期医療や小児医療の水準が上がり、以前であれば救うことが難しかった小さな命が、助かるようになりました。それは何よりも喜ばしいことです。同時に、生まれたあとも医療的なケアを必要としながら生きていく子どもたちが、増えることにもなりました。医療的ケア児の増加は、医療が進歩してきたことの、一つの証でもあるのです。
療養の場が、病院から自宅へ
かつて、医療的ケアを必要とする子どもの療養の場は、病院や施設が中心でした。しかし、地域の医療や在宅を支える仕組みが充実してきたことで、療養の場を自宅に移し、家族とともに暮らすという選択肢が生まれました。
2021年に施行された医療的ケア児支援法は、この流れを後押しするものでした。この法律によって、国や地方公共団体、そして保育所や学校などに、医療的ケア児への支援を行う責務が位置づけられました。医療的ケア児とその家族が、住み慣れた地域で安心して暮らせるようにすること。それが、社会全体の課題として、明確にされたのです。
そして、子どもが自宅で暮らしていくうえで、欠かせない存在となるのが、訪問看護師です。
訪問看護の利用者で、最も増えているのは子ども
こうした流れは、訪問看護の利用者の構成にも、はっきりと表れています。
訪問看護の利用者を年代別に見たある集計では、近年、最も増加しているのは10〜19歳の年代でした。2023年と2025年を比べると、この年代の利用者数は、およそ1.5倍に増えていたと報告されています。高齢者のイメージが強い訪問看護ですが、実は、子どもや若い世代の利用の伸びが、際立っているのです。


