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増えているのは、子どもの訪問看護——在宅の医療的ケア児、17年で倍増の約2万人|訪問看護の利用者で最も伸びているのは10代、高齢者だけではないもう一つの現場

2026年7月17日(更新: 2026年7月17日)·約7分で読めます
増えているのは、子どもの訪問看護——在宅の医療的ケア児、17年で倍増の約2万人|訪問看護の利用者で最も伸びているのは10代、高齢者だけではないもう一つの現場

Summary

訪問看護と聞くと高齢者を思い浮かべる方が多いはずです。けれど今、訪問看護の現場で静かに増えているのは子どもたち。在宅で暮らす医療的ケア児は全国約2万人で、17年ほどで倍増しました。訪問看護の利用者でも、最も伸びているのは10代です。医療的ケア児とは何か、なぜ増えているのか、小児の訪問看護は大人とどう違い、家族をどう支えるのか。訪問看護の「もう一つの現場」を、データとともに整理してお届けします。

「訪問看護」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、高齢者のお宅を看護師が訪ねる光景ではないでしょうか。実際、訪問看護を利用する方の多くは高齢者です。けれど今、その訪問看護の現場で、静かに、けれど確かに増えている利用者がいます。子どもたちです。

在宅で医療的ケアを受けながら暮らす子ども——「医療的ケア児」。その存在と、彼らを支える「小児の訪問看護」について、今回はデータとともに整理してお届けします。訪問看護のもう一つの現場を、知っていただければと思います。

「医療的ケア児」とは — 在宅で約2万人

まず、「医療的ケア児」という言葉を整理しておきましょう。

医療的ケア児とは、医学の進歩を背景に、NICU(新生児特定集中治療室)などに長期間入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアが日常的に必要な児童のことをいいます。2021年に施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」では、日常生活や社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを必要とする、18歳未満の子ども(および高校などに在学する18歳以上の者)と定義されています。

厚生労働省やこども家庭庁の資料によると、在宅で暮らす医療的ケア児(0〜19歳)は、全国で約2万人と推計されています。

この数は、増え続けています。2005年時点では約1万人と推計されていましたが、2022年にはおよそ2万人へと、この17年ほどで約2倍になりました。

なぜ、増えているのでしょうか。その背景には、医療の進歩があります。NICUをはじめとする周産期医療や小児医療の水準が上がり、以前であれば救うことが難しかった小さな命が、助かるようになりました。それは何よりも喜ばしいことです。同時に、生まれたあとも医療的なケアを必要としながら生きていく子どもたちが、増えることにもなりました。医療的ケア児の増加は、医療が進歩してきたことの、一つの証でもあるのです。

療養の場が、病院から自宅へ

かつて、医療的ケアを必要とする子どもの療養の場は、病院や施設が中心でした。しかし、地域の医療や在宅を支える仕組みが充実してきたことで、療養の場を自宅に移し、家族とともに暮らすという選択肢が生まれました。

2021年に施行された医療的ケア児支援法は、この流れを後押しするものでした。この法律によって、国や地方公共団体、そして保育所や学校などに、医療的ケア児への支援を行う責務が位置づけられました。医療的ケア児とその家族が、住み慣れた地域で安心して暮らせるようにすること。それが、社会全体の課題として、明確にされたのです。

そして、子どもが自宅で暮らしていくうえで、欠かせない存在となるのが、訪問看護師です。

訪問看護の利用者で、最も増えているのは子ども

こうした流れは、訪問看護の利用者の構成にも、はっきりと表れています。

訪問看護の利用者を年代別に見たある集計では、近年、最も増加しているのは10〜19歳の年代でした。2023年と2025年を比べると、この年代の利用者数は、およそ1.5倍に増えていたと報告されています。高齢者のイメージが強い訪問看護ですが、実は、子どもや若い世代の利用の伸びが、際立っているのです。

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さらに興味深いのは、その利用の理由です。15歳未満の子どもが訪問看護を利用するようになった理由を見ると、最も多いのは、自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害などの「精神及び行動の障害」で、およそ31%を占めていました。以前であれば「落ち着きがない子」などと言われていた子どもたちに、正式な診断がつくようになり、必要な支援につながるようになった。そのことが、利用の増加につながっていると考えられます。

つまり、小児の訪問看護が支える対象は、人工呼吸器を使うような重い医療的ケア児だけではありません。発達の課題を抱える子どもたちまで、その裾野は、静かに広がっているのです。

小児の訪問看護は、大人の看護とどう違うのか

では、子どもへの訪問看護は、高齢者への訪問看護と、どのような点が異なるのでしょうか。

一つは、ケアの内容です。人工呼吸器の管理、たんの吸引、経管栄養、胃ろうのケアといった医療的ケアは、大人と共通する部分もありますが、小さな体に合わせた、より繊細な対応が求められます。

そして、大人の看護と大きく違うのが、「育ちに伴走する」という視点です。高齢者への看護が、その方の生活を支え、状態を保つことに重きを置くとすれば、子どもへの看護には、成長・発達を促すという役割が加わります。遊びを通じて関わり、その子の「できること」が少しずつ増えていくのを支える。子どもは日々成長していきますから、その成長に合わせて、ケアの内容も変わっていきます。「治す」というより、「その子の育ちに寄り添い、伴走する」看護だと言えるでしょう。

家族を支えるという、大きな役割

そして、小児の訪問看護を語るうえで、決して欠かせないのが、家族への支援です。

医療的ケア児の在宅での暮らしは、家族の——多くの場合、お母さんの——献身によって支えられています。夜間もたんの吸引が必要な子どもの場合、家族はまとまった睡眠をとることが難しく、24時間、気を張り続ける日々が続きます。その負担は、想像を超えるものです。

訪問看護師は、子どもへのケアを行うと同時に、その家族が心身ともに倒れてしまわないように支える、という役割を担っています。ケアの方法を家族と一緒に確認し、不安に耳を傾ける。短期入所などのレスパイト(家族が一時的に休息をとるための仕組み)につなぐ。相談支援専門員や、学校の先生、主治医といった、さまざまな立場の人たちと連携する、そのハブの役割も果たします。

子ども本人だけでなく、その子を囲む家族の暮らし全体を支える。ここに、小児の訪問看護の、大きな意味があります。

広がりの裏にある、課題

もっとも、この分野は、明るい広がりだけを見ていればよいわけではありません。いくつかの課題も、整理しておく必要があります。

一つは、支援体制の地域差です。小さな体への医療的ケアや、発達への専門的な関わりには、相応の知識と経験が必要です。そのため、小児の訪問看護を受け入れられるステーションは、まだ限られているのが実情です。住んでいる地域によって、受けられる支援に差が生まれてしまう可能性があります。

もう一つは、医療的ケア児支援法が施行されたあとも残る、生活の場面ごとの課題です。総務省の調査などでも、学校で医療的ケアを受ける体制の整備や、災害時の支援のあり方など、なお検討すべき点が多いことが指摘されています。子どもが地域で当たり前に暮らし、学び、育っていくためには、訪問看護だけでなく、社会全体の仕組みづくりが求められています。

訪問看護の、もう一つの現場

「訪問看護は高齢者のもの」というイメージを、子どもたちが静かに書き換えつつあります。

在宅で暮らす約2万人の医療的ケア児。そして、発達の課題を抱えながら地域で育っていく、たくさんの子どもたち。その一人ひとりの暮らしが、いま、訪問看護の現場で支えられています。

この広がりは、訪問看護という仕事が持つ可能性の大きさを、あらためて示しています。それは同時に、小児のケアができる看護師をどう育てていくか、という担い手の課題とも、表裏一体です。約2万人という数字の、その一つひとつの向こうには、その子と、その家族の、かけがえのない日々があります。その日々を支える現場が、確かに広がっていることを、知っていただけたらと思います。

#訪問看護#医療的ケア児#小児訪問看護#在宅医療#子ども#発達障害#家族支援#医療的ケア児支援法
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執筆者

HokanPress編集部

医療・看護・介護の多職種チーム

訪問看護・在宅医療の現場に携わる多職種チーム

HokanPress編集部は、訪問看護・在宅医療の現場に実際に携わる多職種チームで構成されています。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属。それぞれの専門分野で培った臨床経験と専門知識をもとに、医療・看護・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。記事は必ず該当分野の有資格者が執筆または監修し、公的統計データや学会発表・厚生労働省の公表資料など、信頼性の高い情報源に基づいて作成しています。

保有資格: 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 言語聴覚士 / 医療ソーシャルワーカー / 管理栄養士 / 介護支援専門員

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

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