退院は、 回復の 途中で 訪れる ——脳卒中後の 在宅生活と 訪問看護|再発を 防ぐ 血圧の 記録と、 失われた 機能ではなくできる ことを 見る 視点

Summary
脳卒中で入院した方の多くが、3か月足らずで自宅に戻ります。回復期リハビリ病棟の平均入院日数は約78日。つまり退院は、回復が終わってからではなく、途中で訪れます。だから在宅での継続が、その後の生活を大きく左右します。再発率の高いこの病気で最も大切な血圧の記録、そして片麻痺という喪失とどう向き合うか。訪問看護の現場からお伝えします。
「まだ十分に良くなっていないのに、帰ってきて大丈夫でしょうか」
退院の日が近づいたご家族から、そう聞かれることがあります。その感覚は、実のところ間違っていません。
回復期リハビリテーション病棟の入院期間は、脳血管疾患で最大150日、高次脳機能障害を伴う場合は180日と定められています。ところが近年は早期退院が進み、平均入院日数はおよそ78日。3か月に届かないうちに、多くの方が自宅へ戻ります。
回復が終わってから退院するのではなく、回復の途中で退院する。今日はその続きを、どう家で支えるのかについてお話しします。
再発を、防ぐ
脳卒中の在宅療養には、機能の回復と並ぶ、もう一つの大きな目標があります。再発を防ぐこと。
この病気の再発率は高く、しかも繰り返すほど重症化する傾向があると報告されています。時間をかけて取り戻した機能が、一度の再発で失われてしまう。それを避けることが、家での暮らしを守る土台になります。
血圧手帳という、地味な武器
高血圧は再発の最大の要因の一つです。だから退院後は、毎日の血圧測定をお願いしています。
測るタイミングにコツがあります。朝と夜の2回、できるだけ同じ時間帯に。血圧は一日の中で上下しますから、条件をそろえてこそ本当の傾向が見えてきます。血圧手帳でもスマートフォンのアプリでも、続けやすいほうで構いません。
訪問のたび、その記録に目を通します。上がってきているなと感じたら主治医へ伝え、薬の調整につなげる。ある訪問看護ステーションでは、この確認を続けた結果、退院から半年で家庭血圧の平均が155から128まで下がった方がいたと報告されています。
診察室で測る一回の数値より、毎日の記録のほうが多くを語ってくれます。
薬と、食卓
脳梗塞の後には、血を固まりにくくする薬が処方されることが多くあります。飲み忘れが再発に直結する薬なので、服薬の状況は毎回確認します。あざができやすい、歯ぐきから血が出るといった変化も、副作用のサインとして見ています。
生活の側では、減塩と運動、禁煙が血管を守る基本とされています。減塩の目標は1日6グラム未満。ただ、いきなり薄味にすると食が細くなる方もいます。出汁の風味を効かせる、酢や香辛料を使う。そうやって少しずつ舌を慣らしていくほうが、結局は長続きします。
食べる楽しみを削らずに塩を減らす。この折り合いをどうつけるかは、ご家庭ごとに違います。


