訪問看護は、 日本だけの 仕組みなのか——オランダ・スウェーデン・アメリカと 比べて 見えた 3つの 特異点|管理者の いない 組織が 在宅ケアの 6割を 占める 国が ある

Summary
訪問看護は日本独自の仕組みではありません。世界各国に在宅で看護を提供する仕組みがあります。ただし形はかなり違います。オランダには管理者を置かずに在宅ケアの6割を担う組織があり、スウェーデンでは高齢者の9割が自宅で暮らし、アメリカには公的な介護保険がありません。三か国と比べたときに見えてくる、日本の訪問看護の特異点を整理します。
訪問看護という仕組みは、日本だけのものなのか。
結論から言えば、違います。看護師が利用者の自宅を訪れてケアを提供する仕組みは、多くの国に存在します。ただし、その形は国によってかなり異なります。誰が費用を負担するのか、誰がケアの必要性を判断するのか、どんな組織が担っているのか。比べてみると、日本の当たり前がそうではないことが見えてきます。
今回はオランダ、スウェーデン、アメリカの三か国を取り上げ、日本の訪問看護の位置を確かめてみます。
オランダ ── 管理者のいない組織が、在宅ケアの6割を占める
まずオランダです。この国には、日本の訪問看護経営者が驚くであろう組織があります。ビュートゾルフです。
2006年、地域看護師のヨス・デ・ブロック氏が4人の仲間と始めた非営利の在宅ケア組織で、10年ほどで1万人規模へ成長しました。オランダの在宅ケアの約60%を占めるとされ、ダボス会議でも取り上げられています。
特筆すべきは、その組織構造です。1万人が働きながら、マネージャーもチームリーダーも一人もいません。バックオフィスに約40人、コーチが約15人いますが、いずれも現場を支える役であり、管理する立場ではないとされます。
運営の仕組みは、こう説明されています。最大12人のチームが40人から60人の利用者を担当する。各チームは独立しており、ケアの提供から看護・介護職の採用、教育、財務に至るまで、裁量と責任を与えられている。40から45チームに1人のコーチを配置する。ICTツールで情報共有と生産性の可視化を行う。
なぜこの形が生まれたのか。背景にあるのは、1990年代にオランダで進んだ在宅ケアの効率化と分業化です。社会保障費の逼迫を受けて効率が追求された結果、ケアは画一的で断片的なものになりました。利用者は毎回違う看護師に自分の症状を説明しなければならず、看護師のほうも目の前の作業に追われてやりがいを失い、離職が続いたといいます。
看護師がケアの全プロセスに責任を持てば、コストを抑えたまま質の高いケアができるのではないか。ビュートゾルフは、その問いから生まれた組織でした。
日本でも2016年に日本法人が設立され、このモデルに取り組む訪問看護ステーションが現れています。
スウェーデン ── 高齢者の9割が自宅で暮らす
次にスウェーデンです。高福祉で知られるこの国は、在宅介護を中心とする方針を貫いてきました。
高齢者の約90%が自宅で生活しているとされます。サービスを提供するのはコミューンと呼ばれる地方自治体で、ホームヘルパーや訪問看護師を派遣します。必要に応じて、一日に数回のケアから24時間体制の見守りまで対応する仕組みです。


