訪問看護の過剰提供規制、2026年から何が変わるか

Summary
2026年6月施行の診療報酬改定で、訪問看護に対する過剰提供規制が大幅に強化される。早朝・深夜の意図的な訪問、頻回訪問による高額請求、精神科特化型ステーションの運用など、問題視されてきた事例と新たな規制内容を、現場経営者として解説する。
訪問看護の給付費は、2012年度の約6,500億円から2023年度には約2兆5,000億円へと、約10年で4倍近くに膨張した。高齢化と在宅医療推進という背景がある一方、一部事業所による不適切な運用が問題視されてきた。2026年6月施行の診療報酬改定では、訪問看護の過剰提供に対する規制が大幅に強化される。現場で起きていた実態と、新たな規制内容を整理したい。
問題視されてきた4つの運用
厚生労働省の社会保障審議会では、訪問看護の不適切運用として以下の事例が繰り返し指摘されてきた。
1. 早朝・深夜帯の意図的な訪問
訪問看護では、早朝(6時〜8時)や深夜(22時〜6時)の訪問に加算が付く。日中の訪問でも十分な利用者に対して、わざわざ早朝に訪問して加算を算定する事例が確認されていた。利用者の必要性よりも事業所の収益を優先した運用である。
2. 短時間訪問の頻回実施
1回の訪問時間を20分未満に抑え、1日に何度も訪問することで訪問回数を水増しする事例。特に有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、同じ建物内の複数利用者に対して連続的な短時間訪問が行われ、1日あたりの請求額が突出するケースがあった。
3. 精神科訪問看護の長期化・高頻度化
精神疾患を持つ利用者への訪問看護は、1日に複数回、週に3回以上の訪問も可能となっている。しかし、医学的必要性に乏しいにもかかわらず長期間にわたって高頻度の訪問を継続し、高額な請求を続ける事業所が問題視されてきた。2024年には大手訪問看護ステーションチェーンで総額数十億円規模の不正請求が発覚している。
4. 医師の指示書に基づかない訪問
訪問看護指示書の内容を超えた訪問や、形骸化した指示書に基づく訪問の継続。医師と事業所の連携不足が背景にある。
2026年改定の具体的な規制内容
包括型訪問看護療養費の新設
最大の変更は、有料老人ホームやホスピス型施設に併設・隣接するステーションを対象とした「包括型訪問看護療養費」の導入だ。1回ごとの算定ではなく、1日単位の包括評価となる。単なる短時間訪問の繰り返しでは収益が上がらない仕組みに変更される。
精神科訪問看護の算定要件厳格化
精神科訪問看護基本療養費について、複数回訪問の要件が厳格化される。医学的必要性を客観的に示す記録が求められ、単に「利用者の希望」や「家族の安心」では複数回算定ができなくなる。
届出義務の強化
訪問回数が一定基準を超える事業所に対して、地方厚生局への詳細な届出が義務付けられる。自治体による実地指導の対象となりやすくなる。
早朝・深夜加算の見直し
早朝・深夜の訪問について、医師の具体的な指示と利用者の状態変化が記録されていることが算定要件となる。「早朝のルーチン訪問」が事実上不可能になる方向だ。
現場への影響
適正に運用してきたステーションへの影響は限定的である。むしろ、記録の徹底や指示書との整合性確認といった日常業務を丁寧に行ってきた事業所ほど、改定後も安定して運営できる。
一方、不適切な運用で収益を上げてきた事業所は、2026年6月以降に経営が立ち行かなくなる可能性が高い。現時点で運用を見直し、適正な訪問計画と記録体制に移行することが求められている。


