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残薬の確認は記録に残す——2026年度改定で運営基準に明記された服薬状況の把握|薬局に伝えるという新しい道

2026年9月8日(更新: 2026年9月8日)·約6分で読めます
残薬の確認は記録に残す——2026年度改定で運営基準に明記された服薬状況の把握|薬局に伝えるという新しい道

Summary

薬カレンダーを開けて、火曜日のポケットに薬が残っている。訪問看護師なら何度も見てきた光景です。2026年度改定で、服薬状況と残薬の確認が運営基準に明記され、把握した内容を訪問看護記録書に記入して保存することが求められるようになりました。主治医だけでなく薬局にも伝えることが望ましいとされています。残薬から何が読み取れるのか、どう聞き、どう書き、誰に渡すのかを整理します。

薬カレンダーを開けると、火曜日のポケットに薬が残っていることがあります。

月曜と水曜は空なのに、火曜だけ手つかず。「飲み忘れちゃったのね」で終わらせていた時期が私にもありました。でも火曜日はデイサービスの日で、帰宅が夕方になり、そのまま横になって夕食を抜いた日だったと後から分かりました。残った薬は、飲み忘れではなく生活の変化のサインでした。

2026年度の診療報酬改定で、この残薬の確認が運営基準に書き込まれました。

何が変わったのか

改定では、指定訪問看護の提供にあたって、服薬状況の確認も含めた利用状況等の把握を行う必要があることが明確化されました。服薬状況には残薬の状況が含まれます。

基準省令では、利用者の心身の状況や病歴などとあわせて服薬状況の把握に努めることが定められ、把握した内容を訪問看護記録書に記入して保存することが求められています。

もう一つ大きいのが情報提供の相手です。主治医への情報提供に加えて、利用者の同意を得たうえで保険薬局へ情報提供を行うことが望ましいと規定されました。

これまでも残薬に気づけば主治医に伝えていました。ただ、薬局に直接伝える道は制度の上ではっきりしていませんでした。訪問看護師が見つけた飲みにくさを、薬剤師に直接返せる。一包化や剤形の変更につながる可能性が、制度の側から開かれたことになります。

同じ改定では、在宅時医学総合管理料と施設入居時等医学総合管理料にも残薬を確認したうえで適切な服薬管理を行うことが要件に加わり、処方箋の新しい様式には残薬確認時の指示欄が追加されました。外来、在宅医療、訪問看護の三つの領域で、同じ方向の見直しが同時に進んでいます。

残薬は、何のサインか

残薬を「飲み忘れ」の一言でまとめてしまうと、その先が見えなくなります。私が訪問先で出会ってきた残り方には、いくつかの型があります。

特定の曜日だけ残る。 その日に何があるかを確認します。デイサービス、通院、家族が来る日。生活のリズムが崩れる日に飲めていないことがあります。

朝だけ、あるいは夕だけ残る。 朝の残薬は起床時間の変化や食欲の低下と重なることが多く、夕の残薬は夕食を食べていない可能性を示します。食事量の変化を先に疑います。

特定の薬だけ残る。 大きい錠剤が飲み込みにくい。粉薬でむせる。苦い。副作用がつらくて自分で止めた。この場合は本人に理由があります。聞かなければ分かりません。

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全体的にまんべんなく残る。 服薬そのものの管理ができなくなっている可能性があります。認知機能の変化や、視力が落ちて薬袋の文字が読めないことも背景にあります。

逆に、多く減っている。 二重に飲んでいる可能性があり、これは残薬より危険です。当メディアで糖尿病の在宅管理を扱った際に書いたとおり、血糖降下薬の重複は低血糖につながります。

残り方の型が分かれば、次の訪問で確認する場所が決まります。薬の話をしているようで、実際には生活と体調を見ていることになります。

責めない聞き方

残薬を見つけたときに、どう聞くか。ここでいつも迷います。

「飲めてないですね」と言われると、多くの方が身構えます。次から薬を隠す方もいます。私が失敗したのは、最初の訪問で残薬を指摘して、それきり薬カレンダーを見せてもらえなくなったときでした。

今は、薬が残っている事実ではなく、飲みにくさから入ります。「この白い薬、大きくないですか」「朝は起きてすぐだと食べられない日もありますよね」。飲めない理由が本人の側にあると前提を置いて聞くと、答えが返ってきやすくなります。

家族がいる場合は、家族の負担も確認します。家族が薬を管理していて、その家族が疲れていれば、セットが追いつかなくなります。薬カレンダーが空でも、実は家族がまとめて捨てていたという場面にも出会いました。

理由が分からないまま「飲めていません」と記録しても、次につながりません。理由まで聞けたときに、初めて対策が立てられます。

記録に、何をどう書くか

記録書への記載が要件になった以上、書き方を事業所で揃えておく必要があります。

私が書いているのは四つです。残薬の有無と量。どの薬が、いつの分が残っているか。本人や家族から聞いた理由。そして誰に伝えたか。

「残薬あり」だけでは、運営指導でも次の訪問でも役に立ちません。「火曜日夕分が3日分残薬。デイの日は夕食を摂らないことがあると本人談。主治医へ電話報告」と書けば、次に訪問する看護師が同じ視点で見られます。

当メディアで訪問看護記録の法的な位置づけを扱った際、記録は算定の根拠であり証拠でもあると書きました。医療事故と訴訟の記事では、裁判所が予見できたかと記録に何が書いてあるかを見ることも紹介しています。残薬の記録も同じで、書いていなければ気づいていなかったことになります。

記録ソフトや手書きの用紙に、服薬状況を書く欄があるかどうかも確認したい点です。欄がなければ経過記録の中に埋もれ、あとから探せません。当メディアで実施時間の記載を扱った記事に書いたとおり、2026年度改定は記録の項目そのものを増やしています。フォーマットの見直しが必要な事業所は多いはずです。

薬局に伝える

新しく開いた道が、薬局への情報提供です。

薬剤師に伝えると何が起きるか。一包化してもらえる。朝夕の袋の色を分けてもらえる。錠剤を小さいものに変えられないか医師に提案してもらえる。粉薬をやめてゼリー状のものに変えられることもあります。

私が経験したのは、大きな錠剤が飲めずに残していた方の件でした。薬剤師に相談したところ、同じ成分で小さい規格のものがあると教えてもらい、医師に提案してもらって変更になりました。翌月から残薬はほぼなくなりました。

伝えるときは、利用者の同意が要ります。「お薬のことで、薬局さんに相談してもいいですか」と聞くだけです。断られたことは今のところありません。

訪問薬剤管理指導が入っている方であれば、薬剤師も訪問しています。同じ家に別の日に入っている専門職として、気づいたことを共有できる関係を作っておくと、後の相談がしやすくなります。

見つけたあとの一手が、変わる

残薬の確認そのものは、訪問看護師が以前からしてきたことです。今回の改定で変わったのは、それを記録に残し、主治医と薬局に渡すところまでが一続きの業務として位置づけられた点だと思っています。

薬カレンダーの中身を見る。残り方の型から理由を推し量る。本人に聞く。書く。伝える。この五つが揃って、初めて次の月の薬が飲めるようになります。

火曜日のポケットに薬が残っていた方は、デイサービスの日の夕食を訪問介護に頼めるよう調整して、それから残らなくなりました。薬の問題は、薬だけでは解決しないことのほうが多いように感じています。

次の訪問で薬カレンダーを開けたら、空いているポケットではなく、残っているポケットの曜日を見てみると、何か見えてくるかもしれません。

#残薬の確認は記録に残す——2026年度改定で運営基準に明記された服薬状況の把握|薬局に伝えるという新しい道
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執筆者

未希

看護師・編集長

大学病院 手術室 10年(麻酔科・外科 幅広い手術を担当)

大学病院の手術室で10年、多岐にわたる外科手術に携わる。手術看護認定看護師として後進指導にもあたった後、現在は訪問看護の現場でキャリアチェンジ中。急性期と在宅の両視点から、看護師に寄り添う情報発信を行っています。

保有資格: 看護師免許 / 手術看護認定看護師 / 医療安全管理者 / BLSプロバイダー

※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています

2026年9月7日