数字で読む訪問看護経営の実像|月商300万円・利益率6.2%・人件費率78%が語る業界の本当の姿

Summary
訪問看護ステーションの月間平均売上300万円、訪問1回あたり単価8,490円、看護師1人あたり月商61万円、収支差率6.2%、人件費率78%——厚生労働省の令和5年度介護事業経営概況調査等が示す業界の経営指標を、宮木が徹底解説します。数字が語る訪問看護経営の実像とは。
訪問看護経営を語るとき、感覚論や精神論が先行しがちだ。しかし、業界の本当の姿は、公的統計の数字が最も雄弁に語る。
厚生労働省が実施する介護事業経営概況調査、令和5年度分の結果を精査すると、訪問看護ステーション経営の骨格が数字で浮かび上がる。月商300万円、訪問単価8,490円、看護師1人あたり月商61万円、収支差率6.2%、給与費(人件費)割合約75%——これらの数字が、業界の現実を静かに、しかし明確に示している。
本稿では、公的データを起点に、訪問看護経営の実像を数字で読み解く。「なぜこの数字なのか」「この数字は何を意味するのか」「自ステーションの数字と比較して何が見えるのか」——数字と向き合うことで、感覚では見えなかった経営の本質が見えてくる。
なお、本稿で使用する数字は、厚生労働省「令和5年度介護事業経営概況調査結果」および業界メディアの公開情報に基づく。最新の数字は各機関の公式発表を参照されたい。
数字1: 月商300万円
訪問看護ステーションの月間平均売上は、約300万円だ。
より正確には、令和3年度の介護事業経営概況調査で「2,964,000円」、令和5年度でおおむね約300万円という水準である。介護報酬・介護予防含む数字であり、業界全体の中央値と考えてよい。
この300万円という数字が意味するものは何か。年商に換算すれば約3,600万円。中小事業所として見れば、規模の大きなカフェ1店舗、あるいは小規模な学習塾1教室と同程度の年商である。
「訪問看護は儲かる」という業界のイメージがある。しかし、実際の平均月商は決して大きくない。看護師5人程度の事業所が全力で運営して月商300万円——これが業界の中央値だ。
自ステーションの月商をこの数字と比較すれば、業界内での位置づけが見えてくる。300万円を大きく上回るならスケール型の経営、下回るなら小規模特化型か経営改善の余地がある事業所、ということになる。
数字2: 訪問1回あたり8,490円
訪問1回あたりの売上単価は、平均8,490円である(令和5年度データ)。
医療保険・介護保険の合算平均値であり、医療保険は加算次第で1万円超、介護保険は7,000〜9,000円程度、というのが実態だ。機能強化型ステーションでは9,000円を超え、通常型では8,000円前後にとどまる、という傾向もある。
訪問看護の売上構造を最もシンプルに表す等式がある:
売上 = 訪問単価 × 訪問回数
この等式の左辺(売上)を上げるには、右辺の2つの要素、すなわち「訪問単価」か「訪問回数」を上げるしかない。訪問単価を上げるには、機能強化型取得、加算算定の徹底、24時間対応体制の整備、専門性ある看護師の確保——といった経営戦略が必要となる。訪問回数を上げるには、看護師の確保、稼働率の向上、移動時間の最適化、ICT活用による業務効率化——といった別次元の戦略が必要だ。
「売上が伸び悩む」と感じている経営者は、まず自ステーションの訪問単価と訪問回数を分解して見ることをお勧めしたい。どちらがボトルネックかで、打つべき手が全く変わる。
数字3: 看護師1人あたり月商61万円
常勤換算看護職員1人あたりの月間売上は、約61万円と算出される。


