訪問看護師の「1日の終わり方」が、翌日の質を決める|現場で見つけた5つの習慣 | HokanPress訪問看護
訪問看護師の「1日の終わり方」が、翌日の質を決める|現場で見つけた5つの習慣
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Summary
訪問看護師として現場に出ていると、1日の終わりに「今日はちゃんとできただろうか」と振り返る瞬間があります。利用者さんの体調変化、ご家族の言葉、自分の対応への小さな後悔。10年以上看護を続けてきて気づいた、1日の終わり方が翌日の質を決めるという事実と、現場で見つけた5つの習慣をお話します。
最後の訪問先から自宅に向かう車の中で、ふと気づくことがあります。
「今日のあの場面、もう少し違う声かけができたかもしれない」
「ご家族のあの表情、何か伝えたいことがあったんじゃないか」
「明日訪問するあの方、夜中に何かなければいいけど」
訪問看護師として10年以上働いてきて、1日の終わりに頭の中で繰り返すこの作業は、決して悪いことではないと感じています。むしろ、看護師としての成長を支える大切な時間だと思っています。
ただ、この「振り返り」がうまくいかないと、翌日に持ち越されてしまう。疲れたまま朝を迎え、心の余裕がない状態で訪問先に向かうことになります。そうすると、利用者さんやご家族にも、その余裕のなさが伝わってしまう。
訪問看護師の1日の終わり方は、想像以上に翌日の看護の質を決めています。今日は私が現場で見つけた、5つの小さな習慣についてお話させてください。
「振り返り」と「引きずり」の違い
まず、私自身が長く混同していた話をします。
訪問看護師2年目くらいまでの私は、毎晩のように「今日の自分の対応」を頭の中で繰り返していました。あの言葉は適切だったか、あの判断は正しかったか、もっと良い対応があったんじゃないか——眠る直前まで考えてしまうことが、ほぼ毎日のようにありました。
これは「振り返り」だと自分では思っていました。看護師としての成長のために、毎日の経験を反省することが大切だと、教育の中で繰り返し教わってきたからです。
でも、3年目になった頃、先輩看護師から言われた一言で、自分のしていることの正体が分かりました。
「未希さん、それは振り返りじゃなくて、引きずりだよ」
ハッとしました。振り返りと引きずりは、似ているけれど全く違う行為だったのです。
振り返りとは
振り返りは、自分の対応を客観的に評価する作業です。
良かった点を確認する。改善点を見つける。次に同じ場面があったらどう対応するか、具体的に考える。そして、その学びを記録するなり、整理するなり、自分の中に定着させる。
これは「未来を作る作業」です。
引きずりとは
一方、引きずりは、自分の対応を感情的に責め続ける行為です。
「なんであんな言い方をしたんだろう」
「自分はダメな看護師だ」
「あの方に申し訳ない」
評価ではなく、感情の渦の中で同じ場面を何度も再生する。具体的な学びには結びつかず、ただ自分を消耗させていく。
これは「過去に縛られる作業」です。
違いを区別できるようになって、変わったこと
この区別を意識するようになってから、私の1日の終わり方は大きく変わりました。
振り返りは、車の中や帰宅直後の30分以内に、意識的に短時間で行う。改善点が見つかれば、メモに書き留めて、翌日以降の行動につなげる。
引きずりが始まりそうになったら、「これは引きずりだ」と自分で気づいて、別の行動に切り替える。お風呂に入る、好きな音楽を聴く、家族と話す——どんな方法でもいいので、感情の渦から自分を引き離す。
これだけで、夜の眠りの質が大きく変わりました。そして翌朝、心の余裕を持って訪問先に向かえるようになりました。
現場で見つけた5つの習慣
ここから、私が現場で見つけて、今も続けている5つの習慣をお話します。
習慣1: 最後の訪問先を出る前に「今日の感謝」を一つ書く
最後の訪問先での記録を書き終えた後、車に乗る前に、その日の感謝を一つだけメモするようにしています。
「Aさんのご家族が、訪問の最後に『今日もありがとうございました』と笑顔で見送ってくれた」
「同行訪問の後輩が、利用者さんへの言葉かけが少しずつ自然になっている」
「ステーションの管理者が、私のシフト調整の希望を快く聞いてくれた」
この習慣のおかげで、1日の終わりに「今日も色々あったけれど、こんな良いことがあった」と感じられるようになりました。脳の中で、ネガティブな出来事ばかりを反芻するのではなく、ポジティブな出来事にも光が当たるバランスが生まれます。
習慣2: 帰宅前の10分間を「区切りの時間」にする
訪問看護の仕事と、家庭・プライベートの時間を、明確に区切ることが大切だと感じています。
私は、最後の訪問先からの帰り道、自宅に着く10分前から「区切りの時間」を設けるようにしています。
具体的には、自宅の近くにあるコンビニの駐車場に車を止めて、5〜10分だけ深呼吸をする。お茶を一杯飲む。スマホで好きな音楽を聴く。これだけです。
家に帰る前のこの10分間で、看護師としての自分から、家族の一員としての自分への切り替えを意識的に行います。
このひと手間がないと、訪問中の出来事を引きずったまま家に帰り、家族との会話がぎこちなくなったり、子どもの話を聞けなかったりすることがありました。10分の余白が、自分も家族も守ってくれています。
習慣3: 「明日の不安」をメモに書き出す
訪問看護師として、明日の訪問先のことで不安になる夜があります。
「Bさんの状態、夜中に急変しないだろうか」
「Cさんのご家族、明日は不機嫌な顔で迎えてくれるかもしれない」
「明日の同行訪問、後輩にうまく伝えられるだろうか」
こうした不安が頭の中をぐるぐる回り始めたら、私はノートを開きます。そして、その不安を全部書き出します。
書き出すと、不思議なことに、不安が小さく感じられるようになります。頭の中で漠然と回っていた不安が、紙の上に具体的な言葉として現れることで、「対処できる課題」として捉えられるようになるのです。
そして、それぞれの不安に対して、「明日できること」を一つだけ書き添えます。
「Bさんの件 → 明日の訪問時に、夜間の体調記録を必ず確認する」
「Cさんのご家族 → 明日は10分早く到着して、まず雑談から入る」
「同行訪問 → 朝の出発前に、後輩に伝えたいポイントを3つメモして渡す」
これで、不安が「行動」に変わります。寝る前に頭の中をぐるぐるさせる必要がなくなります。
習慣4: 週に一度、自分への「お疲れさま」を形にする
毎日の習慣ではなく、週に一度の習慣として大切にしているものです。
訪問看護師の仕事は、平日と休日の区別が曖昧になりがちです。オンコール当番の日もあれば、急な訪問依頼で予定が変わる日もあります。そんな中で、自分自身への「お疲れさま」を形にして示す時間を、意識的に作るようにしています。
私の場合は、土曜日の午前中に、自分の好きなことを必ず一つ予定に入れます。
カフェで本を読む時間。少し遠出して、好きな雑貨屋さんを巡る時間。映画館で一人で映画を観る時間。家族と一緒の時間も大切ですが、「自分一人で、自分のためだけの時間」を持つことが、看護師として続けていく上で欠かせないと感じています。
この時間があることで、平日の疲れがリセットされて、月曜日からまた利用者さんに向き合う気持ちになれるのです。
習慣5: 「同じ看護師の仲間」と話す時間を持つ
一人で抱え込むのではなく、看護師の仲間と話す時間を持つことの大切さを、年々強く感じています。
職場のステーション内での会話も大事ですが、それとは別に、同じ訪問看護師として働く他のステーションの仲間や、病棟時代の同期、看護学校時代の友人など、「外の看護師」と話す時間を月に1〜2回は持つようにしています。
直接会えなくても、LINEや電話、ZoomでもいいのでOK。お互いの近況を話し合うだけで、自分の経験が客観化されたり、新しい視点をもらえたりします。
「うちのステーションだけの問題かと思っていたけど、他の人も同じことで悩んでいたんだ」
「他のステーションでは、こんな工夫をしているのか」
こうした気づきは、自分の働き方を見つめ直すきっかけになります。そして、「私は一人じゃない」という安心感を、何より大切な看護師人生の土台にしています。
なぜ「1日の終わり方」が翌日を決めるのか
ここで、なぜ1日の終わり方がこれほど重要なのか、看護師として10年以上働いてきて感じていることをお伝えします。
訪問看護師の仕事の特殊性
訪問看護師の仕事には、病棟看護師とは異なる特殊性があります。
利用者さんとご家族との関係性は長期にわたり、深いものになります。一人ひとりの人生に深く関わることで、看護師としてのやりがいは大きい一方で、感情的な負担も大きくなります。
訪問先での判断は、基本的に一人で行います。病棟のように、すぐに同僚や医師に相談できる環境ではありません。判断の責任を一人で抱えることが、日々の重みになります。
そして、利用者さんの状態は刻一刻と変化します。看取り期の方を担当していれば、いつ最期の瞬間が来るか分からない緊張感を抱え続けます。
この特殊性の中で働き続けるためには、自分自身の心の状態を整える技術が不可欠だと、私は感じています。
心の余裕が看護の質に直結する
訪問看護師の仕事は、技術的な看護スキルだけでは成り立ちません。利用者さんの気持ちを受け止める、ご家族の不安に寄り添う、ちょっとした表情の変化に気づく——こうした「人としての関わり」が、看護の質を大きく左右します。
そして、これらの「人としての関わり」には、看護師自身の心の余裕が必要です。自分が疲れ切っていたり、不安で頭がいっぱいだったりすると、目の前の利用者さんやご家族に十分に集中できません。
だからこそ、1日の終わり方を整え、翌日に心の余裕を持って向かえる状態を作ることが、結果として看護の質を高めることにつながるのです。
自分を守ることが、利用者さんを守ることになる
「自分のケアより、利用者さんのケアが大事」と考える看護師は多いと思います。それは尊い姿勢ですが、長期的には逆効果になることもあります。
自分を犠牲にして働き続けると、心と体が疲弊し、いずれは看護師として働けなくなります。あるいは、看護の質が下がり、利用者さんに十分なケアを提供できなくなります。
自分自身を整え、健康な状態で看護師を続けることが、結果として多くの利用者さんを長く支えることにつながります。「自分を守ることが、利用者さんを守ることになる」という視点を、特に若い看護師の方々に伝えていきたいと感じています。
1年目・2年目の訪問看護師の方へ
最後に、訪問看護師として働き始めて1〜2年目の方々に向けて、私からの言葉を残させてください。
訪問看護師の1年目・2年目は、本当に大変な時期です。一人で訪問先に向かう緊張感、判断への不安、ご家族との関係構築の難しさ——すべてが新しく、すべてが重く感じられる時期だと思います。
私自身、その時期に何度も「もう辞めたい」と思いました。深夜のオンコールで起こされて駆けつけた帰り道、車の中で泣いたこともあります。利用者さんが亡くなった日に、自分の看護が十分だったか考え続けて眠れない夜もありました。
でも、その時期を乗り越えた先に、訪問看護という仕事の本当の豊かさが待っていました。利用者さんとご家族に寄り添う中で得られる学び、看取りの場面で見せていただく人生の尊さ、一人で判断できるようになった時の自信——これらは、病棟看護師では得られない、訪問看護師ならではの経験です。
1日の終わり方を大切にすることで、その時期を少しでも穏やかに過ごしていただけたらと願っています。完璧を目指す必要はありません。引きずってしまう日があっても構いません。少しずつ、自分なりの「1日の終わり方」を見つけていってください。
まとめ
訪問看護師として10年以上働く中で気づいた、1日の終わり方の大切さについてお話しました。振り返りと引きずりの区別、現場で見つけた5つの習慣、心の余裕が看護の質に直結する理由——どれも完璧にできなくていいので、少しずつ、自分に合うものから取り入れていただけたら嬉しいです。
訪問看護師の仕事は、利用者さんに尊い時間を過ごしていただくと同時に、私たち自身も日々学び、成長する仕事です。長く続けていくためには、自分自身を大切にする視点が欠かせません。
今日も、訪問先で頑張ってきた皆さん、本当にお疲れさまでした。明日もまた、心の余裕を持って利用者さんに向かえますように。
HokanPressでは、訪問看護師の皆さんに寄り添う発信を、これからも続けていきます。
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執筆者
宮木
訪問看護ステーション経営者・救急看護認定看護師
大学病院 救命救急センター 5年 / 手術室 2年 / 大手訪問看護ステーション 5年 / 訪問看護ステーション設立・代表
小学生の頃から訪問看護師を志し、大学病院の救命救急センター・手術室で急性期医療の現場経験を積む。救急看護認定看護師の資格を取得後、大手訪問看護ステーションでの勤務を経て独立。現場と経営の両視点から、医療従事者に実践的な情報を届けます。
保有資格: 看護師免許 / 救急看護認定看護師 / BLSプロバイダー / ICLSプロバイダー
※本記事は公的統計データをもとに看護師資格保有者が執筆しています