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訪問看護ステーションの都道府県別動向|沖縄212%増・全国データで見る業界の地域格差の実態

HokanPress編集部 · 2026年7月10日
訪問看護ステーション数は全国で1万8,042事業所(2024年時点、厚労省調査)に達しましたが、都道府県別の動向を見ると大きな格差があります。令和2年比の増加率で沖縄県が212%と最も高い伸びを示す一方、地域による格差は年々広がっています。2026年6月29日の社保審資料と全国訪問看護事業協会の調査データを軸に、業界の地域偏在の実態をHokanPress編集部が整理します。

訪問看護ステーションが全国に1万8,042事業所——この数字は業界全体を捉える指標としては有用ですが、実は都道府県別に見ると大きな格差が隠れています。

2026年6月29日に開催された第259回社会保障審議会・介護給付費分科会の資料3「訪問看護」、および全国訪問看護事業協会が発表した令和6年度調査結果を精査すると、業界の地域偏在が数字で明確に浮かび上がります。令和2年比の増加率で沖縄県が212%と全国で最も高い伸びを示す一方、地方でも増加率に大きな差があります。「訪問看護は全国で拡大している」という一般論だけでは説明できない構造が存在します。

本記事では、この地域格差の実態を、公開データを軸に整理します。「なぜ沖縄で急増したのか」「都市部と地方の差はどうなっているか」「この格差が業界全体に何を意味するのか」——数字を通して業界の姿を見ていきましょう。

なお、本記事のデータは2026年6月29日 第259回社保審・介護給付費分科会資料3「訪問看護」、全国訪問看護事業協会「令和6年度 訪問看護ステーション数 調査結果」、厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(2024年結果)、および「訪問看護経営マガジン」による最新分析(2026年6月30日発表)に基づいています。

全国データが示す急速な拡大

まず、全国データから見ていきます。

訪問看護ステーションの稼働数は、2024年時点で1万8,042事業所となりました(厚労省「介護サービス施設・事業所調査」)。全国訪問看護事業協会の調査では別集計で1万8,754カ所とされており、集計方法により数値は異なりますが、いずれの統計でも急拡大の傾向は共通しています。

15年前(2010年)は5,119カ所でした。この15年間で約3.5倍。特に近年5年間(令和元年〜令和6年)の伸び率は顕著で、年率7〜10%の増加が続いています。前年比では9.9%増、1,619カ所の純増となりました。

この拡大を支えているのは、85歳以上人口の急増、地域包括ケアシステムの本格運用、病院の在宅シフト、看取り需要の拡大、参入コストの相対的な低さ——といった複数の構造的要因です。

都道府県別データが示す明確な格差

しかし、この全国数字の背後には、都道府県別の大きな格差があります。

令和2年(2020年)から令和6年(2024年)までの4年間の増加率を都道府県別に見ると、最も高いのは沖縄県で212%。4年間で約2.1倍に増えた計算です。この増加率は、全国平均(約135%前後)を大きく上回っています。

沖縄県以外で高い伸びを示した地域は、都市部よりも地方が目立ちます。これは「都市部は既に飽和に近づき、地方でこれから拡大が進む」というトレンドを示唆する可能性があります。

一方、東京都・大阪府・愛知県といった大都市部でも増加は続いていますが、既に事業所密度が高く、増加率は相対的に穏やかです。事業所数の絶対値は都市部が圧倒的に多いものの、伸び率で見ると地方の方が高いという現象が起きています。

なぜ沖縄県で急増したのか

沖縄県での急増の背景を、複数の要因から整理します。

第一に、沖縄県の高齢化率の高さです。総務省統計局のデータによれば、沖縄県の65歳以上人口比率は継続的に上昇しており、高齢化に伴う医療・介護需要が拡大しています。

第二に、離島・過疎地域を含む地理的特性です。沖縄県は本島以外にも多数の離島を抱え、島ごとの医療提供体制の充実が政策的にも求められています。訪問看護がそうしたニーズを埋める役割を担っている構造があります。

第三に、県内の観光業依存経済からの多角化の動きです。コロナ禍を経て、医療・福祉分野への参入・投資が県内で加速したとの業界内の指摘もあります。

第四に、地域包括ケアシステムの推進による政策的支援です。沖縄県も国の政策方針を受けて、在宅医療・介護連携を進めており、訪問看護がその中核として位置づけられています。

これらが複合的に作用した結果として、沖縄県の212%増という数字が生まれたと考えられます。

都市部と地方の対照的な動向

都市部と地方の対照的な動向も、データが示しています。

都市部の特徴として、東京都・大阪府・愛知県といった大都市では、事業所数の絶対値は全国トップクラスですが、事業所密度も高くなっています。「あるエリアに事業所が10以上密集する」現象も見られ、競合の激化と利用者の獲得競争が続いています。増加率が地方よりも相対的に低いのは、既存市場の飽和に近づいている可能性を示唆します。

地方の特徴として、伸び率の高い都道府県では、まだ事業所密度が高くない地域が多く、参入余地が残っています。しかし同時に、看護師確保の困難さ、地理的な移動負担、収益基盤の不安定さ——といった課題も抱えています。「参入余地はあるが継続は容易ではない」構造です。

中間層の県では、地域による事業所数のばらつきが顕著です。県内の都市部と山間部で、事業所密度が大きく異なるケースが目立ちます。

病院・診療所による訪問看護は減少傾向

もう一つ注目すべきデータとして、病院・診療所が実施する訪問看護の減少傾向があります。

第259回社保審資料3では、いずれの統計でも「病院・診療所が行う訪問看護は減少が続いている」と示されています。訪問看護の担い手が「病院・診療所」から「訪問看護ステーション」へシフトしていることが明確です。

この構造変化は複数の意味を持ちます。訪問看護ステーションへの専門化・分業化が進んでいる、病院の経営環境が厳しく訪問看護部門を維持できないケースが増えている、独立系ステーションの成長が続いている、医療機関との連携の重要性が増している——これらが背景要因として考えられます。

利用者要介護度の変化も注目

事業所数の変化と並行して、利用者の要介護度の変化も注目すべきデータです。

介護保険の利用者を要介護度別に見ると、要介護1・2の利用者割合が年々増加しています。要介護1・2の合計で全体の**53.4%**を占めており、比較的医療依存度が低い利用者層への対応力が求められる時代となっています。

「重度者への対応」と「軽度者への幅広い対応」の両方を担える体制作りが、今後のステーション経営の重要テーマになると考えられます。

地域格差が業界に意味すること

これらのデータから見えてくる、業界全体への意味も整理します。

第一に、業界の「全国均一な成長」という認識は正確ではありません。都道府県別に見れば、急拡大地域と成熟に近づく地域があり、地方内でも都市と過疎地の差があります。「訪問看護は成長業界」という単純な表現では捉えきれない構造です。

第二に、経営戦略の立て方が地域により異なるべきです。都市部での経営と地方での経営では、必要な戦略が根本的に異なります。競合対策、看護師確保、連携先関係、事業モデル——すべてが地域特性に応じて設計されるべきです。

第三に、業界の集約化・二極化は今後も続く見通しです。増加率が高い地域では新規参入が続く一方、廃業・休止も同時に増えています(全国では前年比25%増の992件)。「参入と撤退」の同時進行が、地域別にも展開されています。

第四に、政策的な地域対策の必要性です。社保審・介護給付費分科会でも「中山間・人口減少地域での介護サービス確保」が議論されており、地域偏在への政策的対応が今後の重要テーマとなっています。

経営者・関係者への実務的な意味

このデータを、経営者・関係者はどう活用できるでしょうか。

経営者・管理者にとって、自ステーションの都道府県別データを継続的に確認することは、経営環境の把握に直結します。伸び率の高い地域なら成長機会、成熟に近づく地域なら差別化戦略、格差の大きい県なら地域内の位置づけ——それぞれ異なる判断が必要です。

開業・参入を検討する方にとって、都道府県別データは重要な参考情報です。「まだ事業所が少ない地域」なのか「すでに競合が多い都市部」なのか、参入判断の材料となります。ただし、伸び率が高い地域が必ずしも「儲かる地域」というわけではなく、看護師確保や連携基盤の状況も含めた総合判断が必要です。

ケアマネジャー等連携職にとって、地域の事業所動向は日常業務に直結します。地域内での事業所の増減、廃業リスクの高い事業所の把握、利用者に紹介する事業所の選定——これらの判断に、地域データが役立ちます。

利用者・ご家族にとって、住んでいる地域の事業所数を把握することは、選択肢の広さを知る意味で有益です。事業所が多い地域では複数の候補から選べる一方、少ない地域では慎重な選択が必要になります。

結び

訪問看護ステーションの都道府県別動向は、業界の「全国均一な成長」という認識を明確に修正します。沖縄県の212%増という数字が象徴するように、地域によって業界の姿は大きく異なります。都市部と地方の対照的な動向、病院・診療所からステーションへのシフト、利用者要介護度の変化——複数のデータが、業界の複雑な現実を教えてくれます。

「訪問看護は全国で拡大している」という一般論から一歩踏み込み、自分の地域、自ステーション、自地域の医療・介護提供体制がどこに位置しているかを、データで確認する視点が、経営者・関係者・利用者のすべてに求められる時代となっています。

なお、本記事のデータは2026年6月29日 第259回社会保障審議会・介護給付費分科会資料3「訪問看護」、全国訪問看護事業協会「令和6年度 訪問看護ステーション数 調査結果」、厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(2024年結果)、および業界メディアの公開情報に基づく整理です。最新のデータについては、各機関の公式発表でご確認いただければ幸いです。

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