「親に訪問看護を頼みたいけれど、毎月いくらかかるのだろう」。訪問看護の利用を考えるとき、多くのご家族が、まずこの費用のことで不安を感じます。
訪問看護の料金は、医療保険と介護保険のどちらを使うか、訪問の時間、そして事業所ごとの条件によって変わるため、「一律でいくら」とは言いにくいのが実情です。ただ、おおよその目安と、費用の決まり方の仕組みを知っておけば、過度に不安になる必要はありません。
この記事では、訪問看護の費用について、よくある疑問に、Q&A形式でお答えしていきます。まずは全体像をつかんでいただければと思います。
まず、いちばん知りたい目安からお答えします。
自己負担が1割の方の場合、訪問看護の費用は、1回あたり、おおむね数百円から3,000円程度が目安とされています。多くのケースは、1回あたり数百円から1,000円台に収まります。
ただし、この金額は、あくまで目安です。実際の費用は、次のような要素で変わります。医療保険を使うか、介護保険を使うか。1回の訪問が何分か。その方の自己負担割合が何割か。特別な管理や加算がつくかどうか。事業所の所在地(地域によって単価が異なります)。そして、交通費などの保険外の費用がかかるかどうか。
「1回あたり」の負担はそれほど大きくなくても、週に何回も、あるいは毎日利用すれば、当然、月の合計は増えていきます。まずは「1回あたりの目安」を押さえ、そのうえで「月にどのくらいの頻度で使うか」をかけ合わせて考えるのが、費用を見積もるコツです。
訪問看護の費用が人によって違う、いちばん大きな理由は、「使う保険が違う」ことです。
訪問看護は、医療保険と介護保険、二つの制度のどちらかを使って利用します。そして、どちらの保険が適用されるかは、利用する方の状態によって決まります。おおまかには、要介護・要支援の認定を受けている方は介護保険が優先され、そうでない方や、末期がん・難病など一定の状態にある方は医療保険が使われます。
医療保険と介護保険とでは、料金の計算の仕方そのものが異なります。そのため、同じ「訪問看護」でも、どちらの保険を使うかで、費用の出方が変わってくるのです。
加えて、自己負担の割合も、人によって違います。この割合が、1割の人と3割の人とでは、支払う金額が3倍変わります。次の質問で、それぞれ詳しく見ていきましょう。
介護保険を使う場合、1回あたりの料金は、次の計算で決まります。
「サービスの単位数」に、「地域ごとの単価(1単位あたりおおよそ10円から11円)」をかけて、さらに「自己負担の割合(1割から3割)」をかける。これが、1回あたりの自己負担額です。
「単位数」は、誰が訪問するか(看護師か、理学療法士などか)、そして訪問の時間の長さによって、段階的に定められています。20分未満、30分未満、30分以上60分未満、60分以上90分未満、というように、時間が長くなるほど単位数(=料金)も上がる仕組みです。また、訪問看護ステーションから訪問する場合と、病院や診療所から訪問する場合とでも、単価が異なります。夜間や早朝、深夜の訪問には、割増もあります。
介護保険を使ううえで、もう一つ知っておきたいのが「区分支給限度額」です。介護保険では、要介護度に応じて、1か月に使えるサービスの上限額(限度額)が決まっています。この限度額は、訪問看護だけでなく、訪問介護やデイサービスなど、ほかの介護サービスと共有する枠です。限度額の範囲内であれば1割から3割の負担で済みますが、限度額を超えて使った分は、全額が自己負担になります。どのサービスをどれだけ使うかは、ケアマネジャーが作成するケアプランで調整されますので、費用の見通しは、担当のケアマネジャーに確認するのが確実です。
医療保険を使う場合は、「訪問看護基本療養費」に、さまざまな「加算」を加えた金額に対して、自己負担の割合をかけたものが、支払う金額になります。
自己負担の割合は、年齢と所得によって決まります。おおまかには、義務教育就学前が2割、就学後から69歳までが3割、70歳から74歳までが2割、75歳以上が1割です。ただし、70歳以上でも、現役並みの所得がある方は3割負担になります。
基本療養費は、訪問する職種や、訪問の時間、同じ建物に住む利用者が何人いるか、などによって変わります。これに、その方の状態や、事業所の体制に応じた加算が加わります。医療保険の場合、訪問できる回数には原則として上限(週3回まで)がありますが、末期がんや神経難病など一定の状態にある方、特別な指示が出ている方などは、この制限が緩和され、より頻繁な訪問が可能になります。
はい。保険が適用される料金のほかに、「保険外の費用(実費)」がかかる場合があります。ここは、見落とされがちなので、注意しておきたい点です。
代表的なのが、交通費です。事業所によっては、通常の訪問エリアを超える場合などに、交通費を実費として請求することがあります。ほかにも、営業時間外の対応や、キャンセルの料金、そして亡くなった後の処置(エンゼルケア)などに、別途費用がかかる場合があります。
これらの保険外費用は、事業所によって扱いが異なります。だからこそ、契約の前に、「保険の料金以外に、どんな費用がかかりますか」と、はっきり確認しておくことが大切です。
あります。医療費や介護費の自己負担が高額になったとき、負担を軽くする制度が用意されています。
医療保険を使っている場合は、「高額療養費制度」があります。1か月の医療費の自己負担が、年齢や所得に応じて定められた上限額を超えたとき、その超えた分が、あとから払い戻される仕組みです。
介護保険を使っている場合は、「高額介護サービス費」があります。こちらも同じ考え方で、1か月の介護サービスの自己負担が上限額を超えると、超えた分が払い戻されます。
さらに、医療保険と介護保険の両方を使っていて、1年間の自己負担の合計が著しく高額になった場合には、「高額医療・高額介護合算制度」という仕組みもあります。
これらの制度は、多くの場合、申請が必要です。「自己負担が高くなってきたな」と感じたら、加入している健康保険や、お住まいの市区町村の窓口に、利用できる制度がないか、相談してみてください。
生活保護を受給している方も、訪問看護を利用できます。
この場合、費用は、生活保護の「医療扶助」または「介護扶助」でまかなわれ、原則として、利用者本人の自己負担は生じません。手続きは、担当のケースワーカーや、ケアマネジャー、訪問看護ステーションが連携して進めます。経済的な理由で、必要な訪問看護をあきらめる必要はありません。まずは、担当のケースワーカーに相談してみてください。
最後に、費用の面で安心して利用を始めるために、事前にできることをお伝えします。
訪問看護をめぐる費用の不満やトラブルの多くは、事前の情報共有が不足していたことが原因です。逆に言えば、始める前にきちんと確認しておけば、多くは防げます。
まず、見積もりを取ることです。多くの訪問看護ステーションは、初回の相談のときに、料金の見積書を作成してくれます。その際、基本料金だけでなく、加算の見込み額や、交通費などの保険外費用も含めた金額を出してもらうよう、依頼しましょう。「全部込みで、月におおよそいくらになりそうか」を、具体的な数字で把握しておくことが大切です。
そして、可能であれば、複数のステーションから見積もりを取って、比較してみるのも有効です。
わからないことは、遠慮なく質問してください。ケアマネジャー、お住まいの地域の地域包括支援センター、そして訪問看護ステーションが、相談に乗ってくれます。費用の仕組みは複雑ですが、専門職が、あなたの状況に合わせて説明してくれます。
訪問看護の費用は、1割負担の方で、1回あたりおおむね数百円から3,000円程度。医療保険か介護保険か、訪問時間、加算、交通費などで金額は変わります。そして、負担が高額になったときには、高額療養費や高額介護サービス費といった、軽くするための制度があります。生活保護を受けている場合は、原則として自己負担はありません。
大切なのは、「1回あたりのおおよその目安」と「使える負担軽減の制度」を知っておくこと、そして利用の前に見積もりを取り、保険外の費用まで含めて確認しておくことです。この二つを押さえておけば、費用の不安は、ずいぶん小さくなるはずです。
正確な金額は、その方の状態や地域、利用の頻度によって変わります。具体的な費用については、担当のケアマネジャーや、お近くの訪問看護ステーション、地域包括支援センターに、ぜひ一度ご相談ください。