在宅医療の需要が年々増加するなか、訪問看護師が果たす役割はこれまで以上に重要性を増しています。厚生労働省の推計によれば、2025年には約30万人が在宅での医療・介護を必要とするとされ、その受け皿としての訪問看護ステーションへの期待は高まる一方です。
しかし、現場では依然として多くの課題が山積しています。本稿では、訪問看護師へのヒアリング調査をもとに、在宅医療が直面する3つの主要課題を整理します。
【課題1】多職種連携の壁
在宅医療では、医師・薬剤師・理学療法士・ケアマネジャーなど多くの専門職が関わります。しかし、情報共有の仕組みが十分に整備されていないケースが少なくありません。ある訪問看護ステーションの管理者は「主治医への報告がFAXのみで、緊急時にリアルタイムで情報が伝わらないことがある」と語ります。
ICTツールの導入が進みつつあるものの、導入コストやスタッフのITリテラシーの格差が障壁となっています。厚労省が推進する「医療介護連携情報システム」の普及率は依然として低く、地域によって大きな差があるのが現状です。
【課題2】家族介護者の負担
在宅療養を継続するうえで、家族の存在は欠かせません。しかし、介護を担う家族の高齢化や核家族化により、家族介護者自身が心身の不調を抱えるケースが増えています。
訪問看護師は利用者だけでなく、家族の健康状態にも注意を払う必要があります。「利用者さんのバイタルチェックと同時に、ご家族の表情や言動の変化も観察している」という声は多くの訪問看護師から聞かれます。レスパイトケアの活用促進や、家族向けの相談窓口の整備が急務です。
【課題3】人材確保と定着
訪問看護ステーションの約4割が「看護師の確保が困難」と回答しています。病棟勤務と比較して、一人で判断を求められる場面が多いことや、移動時間の負担、オンコール対応による精神的ストレスが離職の要因として挙げられています。
新卒看護師の訪問看護への参入を促進するため、一部の自治体では研修プログラムの充実や、メンター制度の導入を進めています。また、ICTを活用した遠隔相談システムにより、経験の浅い看護師でも安心して訪問できる環境づくりが始まっています。
今後、地域包括ケアシステムの深化とともに、訪問看護の質と量の両面での拡充が求められます。現場の声に耳を傾けながら、制度設計と実践の両輪で課題解決に取り組むことが不可欠です。