東京商工リサーチが2026年4月18日に発表したデータが、日本の医療現場に衝撃を与えています。2025年度の医療機関倒産は71件で過去20年最多を更新、病院・クリニック・歯科医院の倒産・休廃業合計は帝国データバンクの集計で717件に達し、こちらも過去最多です。
さらに深刻なのは赤字法人の構造的拡大です。厚生労働省「第25回医療経済実態調査」では一般病院の約7割、クリニックの約4割が赤字。総務省「令和6年度地方公営企業等決算」では公立病院の約8割が赤字という衝撃的なデータが示されました。20床以上の地域医療を担う病院の倒産も2025年で12件と前年比1.7倍に急増し、2010年以来15年ぶりに10件を超えています。
「病院の倒産は私たちと関係ない」「自ステーションは別の話」——こうした認識を持っていられる時代ではなくなりました。訪問看護は、連携病院、退院支援、在宅医療体制、利用者の医療アクセスのすべてにおいて、病院との関係性の上に成立しています。地域の中核病院が消えれば、訪問看護の経営基盤そのものが揺らぎます。
本記事では、医療機関倒産過去最多が訪問看護に突きつける現実、地域医療崩壊期における訪問看護の役割、そしてこの時代を生き抜くために業界が直視すべき5つの課題と進むべき方向性を、事実ベースで考察します。
まず、検証可能な数字で、医療機関倒産の現実を整理します。
東京商工リサーチが2026年4月18日に発表したデータは、医療機関の経営危機を明確に示しています。
検証可能な数字:
「再建型の民事再生は2件のみ」という事実が、経営不振に陥った医療機関の再建困難さを物語っています。
20床以上の入院設備を持つ病院の倒産が、明確に増加しています。
病院倒産の構造:
地域医療の中核を担う中堅病院の倒産は、地域の医療提供体制を揺るがす深刻な事態です。
倒産は氷山の一角に過ぎません。赤字状態の病院は遥かに広範囲に及んでいます。
赤字病院の構造:
「倒産していないだけ」の病院が、業界の大半を占めている構造です。
医療機関倒産の原因は、構造的な要因の積み重ねです。
主な原因:
これらは、訪問看護業界が直面している経営圧迫要因と、構造的に共通しています。
医療機関だけでなく、医療・福祉事業全体でも倒産が過去最多です。
業界全体の構造:
「医療と介護の同時崩壊」が、現実の問題として進行中です。
医療機関倒産過去最多は、訪問看護業界に何を突きつけているのか。5つの現実を整理します。
最も直接的な影響が、連携病院の経営難です。
経営難の影響:
連携病院が経営難に陥れば、訪問看護の運営基盤も揺らぎます。
医療機関の倒産・廃業は、医療空白地帯の拡大を生みます。
空白地帯の構造:
「訪問看護はあるが訪問診療医がいない地域」が、現実の問題として拡大しています。
病院倒産は、患者の地域回帰を加速させます。
地域回帰の構造:
訪問看護需要が「望まれて」ではなく「他に選択肢がなくて」増加する構造です。
病院の経営難は、看護師確保競争の激化にもつながります。
競争激化の構造:
「病院がリストラ→訪問看護に流入」という単純な構造ではなく、複雑な人材移動が発生しています。
医療機関の倒産過去最多は、制度全体の不確実性も増大させています。
不確実性の構造:
「制度に頼れば何とかなる」という発想の限界が、明確に示されています。
医療機関倒産が過去最多という地域医療崩壊期において、訪問看護にはどんな役割が求められるのか。
訪問看護は、地域医療の「最後の砦」としての役割を強化することが期待されます。
最後の砦としての要素:
「病院に代わる」のではなく「病院がなくても地域医療が成立する」体制の中核が、訪問看護です。
在宅医療体制の中核としての役割も、強化される方向性です。
中核としての要素:
「単独サービス」から「在宅医療チームの中核」への進化が求められます。
地域包括ケアシステムにおける訪問看護の存在感も、急速に高まっています。
存在感の要素:
「縁の下の力持ち」から「地域医療の主役の一人」への位置づけ転換が、業界の方向性です。
地域医療崩壊期には、訪問看護の高度な専門性の発揮が求められます。
専門性の方向性:
「誰でもできる訪問看護」ではなく「専門性ある訪問看護」が、業界の差別化要因となります。
最後に、地域社会全体への貢献という役割も、強化される方向性です。
貢献の方向性:
「事業所」から「地域社会の一員」への意識転換が、これからの訪問看護に求められます。
地域医療崩壊期に向き合う訪問看護業界として、直視すべき5つの課題を整理します。
最も基本的な課題が、自らの経営の持続可能性です。
持続可能性の要素:
「他者を支援する以前に、自らが持続可能でなければならない」という当然の前提を、改めて確認する必要があります。
看護師確保の構造的困難も、直視すべき課題です。
対応の方向性:
「採用できる訪問看護」と「採用できない訪問看護」の差が、生存の分岐点となります。
連携先関係の戦略的構築も、極めて重要な課題です。
構築の方向性:
「特定の連携先依存」のリスクを認識し、複数の連携網を構築する戦略が求められます。
専門性の体系的向上も、業界全体の課題です。
向上の方向性:
「資格を持つ訪問看護師」が、地域医療崩壊期の希望の光となります。
最後に、業界全体の信頼確保という課題です。
信頼確保の方向性:
サンウェルズ事件以降の業界の信頼回復が、これからの重要なテーマです。
地域医療崩壊期において、訪問看護業界が進むべき5つの方向性を整理します。
最も大きな方向転換が、量的拡大から質的向上へのシフトです。
質的向上の要素:
「ステーション数の増加」ではなく「サービスの質の向上」が、業界の発展指標となります。
多職種統合型への進化も、業界の方向性です。
統合の要素:
「訪問看護単独」から「多職種統合型在宅医療」への進化が、業界の競争力を支えます。
ICT・DXの本格活用も、業界全体の方向性です。
活用の方向性:
「ICT投資できない事業所は競争力を失う」時代が、明確に到来しています。
地域への能動的関与も、業界の方向性です。
関与の方向性:
「事業所内に閉じる」のではなく「地域に開く」訪問看護が、これからの姿です。
最後に、業界としての発信力強化も、進むべき方向性です。
発信力の要素:
「現場の声」が、政策決定の場に届く業界へ、進化していく必要があります。
地域医療崩壊期に経営者として直視すべき5つの問いを整理します。
連携病院への依存度を、客観的に評価する問いです。
評価の視点:
「特定病院への依存」のリスクを、認識する必要があります。
自ステーションの地域での位置づけも、直視すべき問いです。
位置づけの評価:
「地域に必要とされる訪問看護」かどうかが、生存の鍵です。
経営の持続可能性への問いも、避けられません。
持続可能性の評価:
「3年後の自ステーション」が具体的にイメージできるかどうかが、問われます。
業界全体への貢献という視点も、経営者の問いです。
貢献の方向性:
「自ステーションだけ」ではなく「業界全体の発展」を意識する姿勢が、これからの経営者には求められます。
最後に、訪問看護の社会的意義への問いです。
意義の確認:
「なぜ訪問看護を続けるのか」という根本的な問いに、改めて向き合う必要があります。
ここまで厳しい現実を整理してきましたが、業界の未来への希望もあります。
地域医療崩壊期にこそ、訪問看護の社会的価値が上昇します。
価値上昇の構造:
「地域医療崩壊」は、訪問看護にとって「機会」でもあります。
制度的支援も、継続的に進む方向性です。
制度的支援の動き:
業界全体としての制度改善への流れは、明確に続いています。
看護師の社会的地位向上も、業界の希望です。
地位向上の動き:
「看護師という仕事を選んで良かった」と思える業界へ、確実に進化しています。
ICT・DXによる業務革新も、希望の源泉です。
革新の方向性:
ICT・DXは、業界の構造的課題を解決する強力なツールです。
最後に、業界全体の質的向上も、希望の方向性です。
質的向上の動き:
「淘汰」と「向上」が同時並行で進むことで、業界の質的レベルが底上げされます。
東京商工リサーチが発表した2025年度の医療機関倒産71件・過去20年最多、病院・クリニック・歯科医院の倒産・休廃業合計717件(帝国データバンク)、一般病院の約7割・公立病院の約8割が赤字という現実は、日本の医療提供体制の崩壊期を象徴する数字です。
訪問看護に突きつけられる5つの現実(連携病院の経営難、医療空白地帯の拡大、患者の地域回帰、看護師確保競争の激化、制度全体の不確実性増大)を直視することが、業界の出発点となります。
地域医療崩壊期における訪問看護の役割として、地域医療の最後の砦、在宅医療の中核、地域包括ケアシステムでの存在感、高度な専門性の発揮、地域社会への貢献——5つの役割を果たすことが、業界の社会的使命です。
業界が直視すべき5つの課題(経営の持続可能性、看護師確保、連携先関係の戦略的構築、専門性の体系的向上、業界全体の信頼確保)に着実に取り組むことが、生存の前提となります。
業界が進むべき5つの方向性(質的向上、多職種統合型、ICT・DX本格活用、地域への能動的関与、業界としての発信力強化)を、自ステーションの実情に応じて選択・実行することが、これからの経営の指針です。
経営者として直視すべき5つの問い(連携病院への依存度、地域での位置づけ、経営の持続可能性、業界全体への貢献、訪問看護の社会的意義)に正直に向き合うことが、地域医療崩壊期の経営の出発点となります。
そして、業界の未来への希望として、訪問看護の社会的価値の上昇、制度的支援の継続、看護師の社会的地位向上、ICT・DXによる業務革新、業界全体の質的向上——5つの希望が、業界の前進を支えます。
地域医療の崩壊期は、訪問看護にとって最大の試練であり、同時に最大の機会でもあります。「病院がなくなる地域に、訪問看護はあるか」「医療空白地帯で、訪問看護は何ができるか」「在宅医療の中核として、訪問看護はどう進化するか」——これらの問いに、業界として、経営者として、看護師個人として、答えを出していくことが、これからの時代に求められる本質的な使命です。
なお、本記事に記載した倒産件数・赤字割合等のデータは、東京商工リサーチ(2026年4月18日発表)、帝国データバンク(2026年1月23日発表)、厚生労働省「第25回医療経済実態調査」、総務省「令和6年度地方公営企業等決算」等の公表資料に基づくものです。最新の状況は、各機関の公式発表でご確認ください。
HokanPressでは、訪問看護経営の本質的なテーマについて、引き続き率直な発信を続けてまいります。