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医療保険の訪問看護、利用者の47.4%が精神疾患——変わった姿と、追いつかない自己像|それでも機能強化型は精神科を受けていない

宮木 · 2026年8月27日
中央社会保険医療協議会に示された資料によれば、医療保険による訪問看護の利用者の主傷病は「精神及び行動の障害」が47.4%で最多でした。年々増加しています。ところが手厚い体制を評価される機能強化型ステーションでは、精神科訪問看護の利用者割合が20%未満という事業所が多い。数字が示す構造のねじれと、その先にあるものを分析します。

2025年11月12日の中央社会保険医療協議会に提出された資料に、訪問看護の姿を根本から問い直す数字が載っている。

医療保険による訪問看護ステーションの利用者の主傷病で、最も多いのは「精神及び行動の障害」だった。その割合、47.4%。神経系の疾患と悪性新生物を加えれば、8割弱を占める。

しかも精神及び行動の障害は、年々増加している。訪問看護療養費実態調査に基づく推計値である。

医療保険の訪問看護は、もはや高齢者の身体的なケアが中心という事業ではない。利用者のおよそ半数が、精神疾患を抱えた方だ。この事実から、今回の分析を始めたい。

訪問看護の「顔」が変わった

業界の自己像は、まだこの変化に追いついていないように見える。

訪問看護と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、高齢の利用者宅を訪ね、血圧を測り、褥瘡を処置し、看取りを支える姿だろう。当メディアもそうしたケアを繰り返し扱ってきた。それ自体は間違いではない。介護保険による訪問看護では、依然として高齢者の身体的なケアが中心である。

だが医療保険の側を見れば、風景は違う。主傷病の内訳で精神疾患が半数近くを占め、その比率は上がり続けている。

精神科訪問看護を利用する方の疾患の内訳を見ると、統合失調症や統合失調症型障害、妄想性障害が大きな割合を占め、気分障害、精神作用物質による障害を加えると全体の9割近くになるという資料もある。地域で暮らす精神障害のある方を支えることが、医療保険の訪問看護の主要な仕事になっているのだ。

なぜ、増え続けているのか

背景にあるのは、精神科医療の方向転換である。

長く入院で支えられてきた精神障害のある方を、地域で支える体制へ移していく。国はその方針を進めてきた。退院した後に地域で生活を続けるには、日々の服薬の支援、生活のリズムの調整、症状の変化の把握、そして孤立を防ぐ関わりが要る。それを担う職種として、訪問看護に期待が寄せられた。

厚生労働省の資料にも、精神科訪問看護は退院後の医療を提供する機能として患者や家族のニーズが高く、これを担う人材の養成が課題であると記されている。

需要があり、参入する事業所も増えた。当メディアで整理したとおり、算定には精神科を担当する医師の指示書、届出を行った従事者、GAF尺度による評定といった要件があるが、逆にいえば要件を満たせば取り組める領域でもある。結果として、精神科に特化したステーションが各地に生まれた。

ねじれ ── 手厚い事業所ほど、受けていない

ここで、資料が示すもう一つの事実に触れたい。

精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者数は年々増えている。ところが機能強化型訪問看護ステーションでは、それ以外のステーションと比べて、精神科訪問看護の利用者割合が20%未満と少ない事業所が多かった。

機能強化型は、当メディアで加算の推移を分析した際に述べたとおり、手厚い体制を評価する仕組みである。ターミナルケアや重症児の受け入れを積極的に行う事業所が機能強化型1と2、地域の人材育成などの役割を担う事業所が3として評価される。届出は令和6年8月時点で、機能強化型1が477事業所、2が314事業所、3が172事業所だった。

つまり、体制が手厚いと評価される事業所ほど、いま最も利用者が多い領域を担っていない。精神科は精神科特化の事業所が担い、機能強化型は看取りや重症児を担う。役割が分かれていること自体は自然だが、制度の評価軸と実際の需要の分布が噛み合っていないことになる。

制度は、ねじれを埋めにきた

このねじれに対する答えが、2026年度改定で示された。

当メディアでお伝えしたとおり、機能強化型訪問看護管理療養費4が新設された。月の初日で9,030円。重症の難病や精神科への対応力が高い事業所を評価する区分であり、常勤看護師4名以上、24時間対応体制、重症者や精神障害のある方への実績などが要件になる。

規模ではなく機能で評価する。中規模の事業所でも、専門性を強みに算定を狙える設計になっている。精神科を担う事業所を、制度の中で正当に位置づけようという意図が読み取れる。

同時に、訪問看護ステーションの大規模化も進んでいる。看護職員が常勤換算で5人以上のステーションの割合は、令和6年で46.2%に達した。小規模事業者の集合体という業界の姿も、少しずつ変わりつつある。

もう一つの顔 ── 適正化の対象でもある

ただし、精神科訪問看護をめぐる制度の動きは、評価の強化だけではない。

当メディアで報じたとおり、2026年1月から厚生労働省による全国一斉調査が始まっている。対象には、ホスピス型の有料老人ホームの入居者とともに、精神障害者を対象とする訪問看護ステーションが含まれる。中医協の議論でも、一部の精神科訪問看護で過剰なサービス提供がなされているとの指摘があり、指導・監督を含めた適切な対応が求められると発言があった。

2026年6月の改定では、訪問時間について30分以上を標準とし20分を下回るものは算定できないという規定が設けられ、精神科訪問看護基本療養費についても同様とされた。短時間の訪問を積み重ねる運用は、成り立たなくなった。

評価と適正化が、同時に進んでいる。精神科を真摯に担う事業所は手厚く評価し、逸脱した運用には網をかける。当メディアで整骨院の業界と比較した際にも述べたが、公定価格の事業ではおなじみの構図である。

事業者は、この数字をどう受け止めるか

経営者として、この構造から読み取るべきことを三つ挙げたい。

第一に、自事業所の利用者構成を把握することだ。医療保険の利用者のうち、精神疾患の方が何割を占めるのか。全国平均が47.4%であるとき、自分たちがどの位置にいるのかを知っておく意味がある。

第二に、精神科を担うなら、要件を確実に満たすことである。指示書の交付医、従事者の届出、GAFの記載、訪問時間と記録。当メディアで算定要件を整理したとおり、精神科訪問看護には固有の要件が多い。調査の対象になっている領域であればなおさら、根拠を残せる運用が要る。

第三に、精神科を担わない選択もまた戦略だという点だ。看取りや重症児、難病に軸足を置くなら、機能強化型1や2の要件を満たす体制づくりに集中したほうがいい。すべてを受けようとすれば、専門性が薄まる。

医療保険の訪問看護の利用者は、半数近くが精神疾患を抱えた方である。この事実は、業界の外にはほとんど知られていないだろうし、業界の中でも共有されているとは言いがたい。高齢者の身体ケアという自己像のままでいれば、制度の議論も人材の育成も、実際の需要から離れていく。

数字は、すでに姿を変えたことを示している。その姿を正面から見ることから、次の議論は始まるはずだ。

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