2026年6月1日に施行された診療報酬・介護報酬改定から3日目を迎えました。訪問看護物価対応料、介護職員等処遇改善加算(1.8%)、ベースアップ評価料(I)の引き上げ、包括型訪問看護療養費、D to P with N、訪問看護医療情報連携加算、特別地域訪問看護加算の拡充——これら複数の制度変更が、6月1日から一斉に動き始めました。
施行直後の今、経営者・管理者にとって最重要なのは、新区分への対応漏れ・算定漏れの確認です。数千円から月数十万円規模の収益機会が、確認漏れによって失われる可能性があります。
私たちHokanPress編集部では、施行3日目の現時点で、経営者・管理者が今週中に確認すべきチェックリストを整理しました。施行直後の混乱を最小化し、新制度を確実に経営に反映させるための実務ガイドとして活用していただければ幸いです。
まず、施行から3日間で訪問看護業界全体で起きていることを整理します。
2026年6月1日施行で、訪問看護に影響する制度変更が一斉に動き始めました。
主な変更:
これらすべてが同時施行のため、現場での対応負担は非常に大きい状況です。
施行直後の現場では、以下のような混乱が生じやすい状況があります。
第一に、レセプトソフトの対応確認漏れ。新区分の自動算定設定が完了していないと、6月分のレセプト提出時に算定漏れが発生する可能性があります。
第二に、訪問記録の記載項目変更への対応遅れ。新区分の算定根拠として必要な記載項目が、訪問記録に反映されていないケースが想定されます。
第三に、スタッフへの周知不足。改定内容を現場スタッフが正確に理解していないと、訪問時の記録や利用者への説明に齟齬が生じる可能性があります。
第四に、利用者・ご家族への説明不足。自己負担額の変更や訪問内容の変化について、事前説明が不十分なケースも想定されます。
6月1日から6月分のレセプトを提出するまでの時間は、想像以上に短いものです。
6月分レセプトのスケジュール:
つまり、施行から約40日間で、新区分での算定を確実に行い、レセプトを提出する必要があります。施行直後の今週・来週の準備が、経営に直結する重要な時期となります。
ここから、経営者・管理者が今週中に確認すべきチェックリストを整理します。
レセプトソフトのアップデート状況を、確実に確認します。
確認内容:
確認1-1: 新加算の自動算定設定
確認1-2: 変更された加算の自動再計算
確認1-3: 包括型訪問看護療養費の対応
確認1-4: ソフトベンダーへの問い合わせ
レセプトソフトが対応していないと、手作業での算定が必要となります。今週中の確認が不可欠です。
新設加算の算定には、事前の体制届提出が必要です。
確認内容:
確認2-1: 介護職員等処遇改善加算の体制届
確認2-2: ベースアップ評価料(I)(II)の届出
確認2-3: 訪問看護医療情報連携加算の届出
確認2-4: 機能強化型訪問看護管理療養費の届出継続
確認2-5: 特別地域訪問看護加算の届出
体制届が未提出だと、算定要件を満たしていても算定できません。今週中の最終確認が必要です。
新区分での算定根拠として、訪問記録の記載項目を見直します。
確認内容:
確認3-1: 訪問時間の正確な記載
確認3-2: 同一建物・同一日の訪問人数の記載
確認3-3: 訪問内容の具体的記載
確認3-4: 加算算定の根拠記載
確認3-5: 医療情報連携の記録
訪問記録は算定の根拠です。記載項目の漏れが、後の返還リスクにつながります。
現場スタッフへの改定内容の周知を確認します。
確認内容:
確認4-1: 全スタッフへの説明実施
確認4-2: 新しい業務フローの理解
確認4-3: 個別ケースへの対応理解
確認4-4: 困った時の相談体制
スタッフが理解していないと、現場での記録ミスや算定ミスが多発します。
改定による影響を、利用者・ご家族に説明する準備を行います。
確認内容:
確認5-1: 自己負担額への影響説明
確認5-2: 訪問内容の変更説明
確認5-3: ご家族への文書配布
確認5-4: 不安への対応準備
利用者・ご家族への丁寧な説明が、信頼関係の維持につながります。
主治医、ケアマネジャー、訪問介護員等の連携先への情報共有を確認します。
確認内容:
確認6-1: 主治医への情報共有
確認6-2: ケアマネジャーへの情報共有
確認6-3: 多職種への情報共有
確認6-4: 業界団体との情報交換
連携先との連携が、適切なケア提供と算定の前提となります。
6月分レセプト提出に向けた最終確認体制を整えます。
確認内容:
確認7-1: 6月分レセプトのスケジュール
確認7-2: ダブルチェック体制
確認7-3: 算定根拠資料の保存
確認7-4: 修正対応の準備
確認7-5: 翌月以降の改善ポイント
最初の月のレセプトが、その後の運用基準を作ります。
特に重要な算定項目について、詳細な確認ポイントを整理します。
訪問看護物価対応料は、医療保険上の訪問看護療養費を算定する全ての利用者に対して自動算定される構造です。
確認ポイント:
物価対応料は単独では小額ですが、確実に算定することが重要です。
訪問看護への新設加算で、5月15日までに体制届が必要だった項目です。
確認ポイント:
体制届が未提出の場合、6月分から算定できません。即時の対応が必要です。
月初の訪問日に算定する評価料で、780円から1,050円に引き上げられました。
確認ポイント:
引き上げ額が確実に算定されているか、月次で確認します。
18区分から36区分に拡大され、ステーションの賃金改善実績により細かく評価される構造になりました。
確認ポイント:
選択区分が不適切だと、本来取れる加算を取りこぼします。
ホスピス型住宅や高齢者向け住宅併設等で算定する新設の包括型評価です。
確認ポイント:
包括型と個別算定の選択は、経営判断として重要です。
オンライン診療時に看護師が利用者宅で診療補助を実施する場合の新設加算です。
確認ポイント:
実施には複数の準備が必要ですが、新たな収益機会となります。
医療機関とオンラインで診療情報を共有・活用した場合の新設加算(月1,000円)です。
確認ポイント:
ICT環境の整備が前提となる加算です。
過疎地・離島での訪問看護に対する加算が拡充されました。
確認ポイント:
該当する事業所は、確実に新区分を活用します。
同一日・同一建物内の算定人数に応じた階段的評価に変更されました。
確認ポイント:
特に集合住宅併設事業者は、収益への影響を詳細に試算する必要があります。
施行直後の混乱期を乗り越えるため、算定漏れ防止の実務体制を整えます。
レセプト提出前に、必ずダブルチェックを実施する体制を作ります。
ダブルチェックの体制:
チェック項目:
時間を確保して、確実なチェックを行います。
毎月のレセプト前に確認する標準チェックリストを作成します。
リストの内容:
これを月次の業務フローに組み込みます。
施行直後は、判断に迷う場面が多発します。即時相談できる体制が必要です。
相談体制:
複数の相談先を確保しておくことが、判断の精度を高めます。
厚生労働省は施行後も継続的に疑義解釈を発出します。
フォロー体制:
継続的なフォローが、運用の精度を高めます。
6月の経験を、7月以降の運用改善に活かす仕組みを作ります。
改善サイクル:
これを継続することで、運用が着実に質を高めていきます。
ステーションのタイプ別に、特に注意すべき確認ポイントを整理します。
一般的な在宅訪問を中心とするステーションの確認ポイント:
最重要確認:
このタイプでは、複数名訪問加算等の見直しの影響は限定的です。新設加算の確実な取得が最優先となります。
ホスピス型住宅併設のステーションの確認ポイント:
最重要確認:
このタイプでは、収益構造の根本的な見直しが必要となる可能性があります。
精神科訪問看護中心のステーションの確認ポイント:
最重要確認:
このタイプでは、業務フローの大幅な見直しが必要となります。
過疎地・離島の事業所の確認ポイント:
最重要確認:
このタイプでは、新たな収益機会の確実な活用が経営安定化につながります。
機能強化型訪問看護管理療養費を取得しているステーションの確認ポイント:
最重要確認:
このタイプでは、機能強化型の維持と関連加算の最大活用が重要です。
最後に、施行直後の経営者として持つべき心構えを整理します。
施行直後にすべてを完璧に対応するのは現実的ではありません。
優先順位:
すべてを一気にやろうとせず、優先順位を持って取り組みます。
施行直後は、必ず何らかの失敗や見落としが発生します。
対応の姿勢:
失敗を学びに変える文化が、経営の質を高めます。
経営者一人で抱え込まず、専門家や同業者を頼ります。
頼る相手:
「分からない」を放置せず、聞く姿勢が重要です。
施行直後は、現場スタッフも混乱しています。経営者として、スタッフを支える姿勢が重要です。
支えの姿勢:
スタッフが安心して働ける環境が、現場の対応力を高めます。
施行直後の対応に追われながらも、長期的な視点を保ちます。
長期視点:
目の前の対応と長期戦略のバランスが、経営者の責務です。
2026年6月1日施行の診療報酬・介護報酬改定から3日目を迎えました。複数の新設加算、変更された加算、見直された区分が一斉に動き始める中で、経営者・管理者として、算定漏れを防ぐための確認作業が今週中に必須となります。
レセプトソフトの対応確認、体制届の提出状況、訪問記録の記載項目見直し、スタッフへの周知、利用者・ご家族への説明準備、連携先への情報共有、月次レセプト前の最終確認体制——7つの確認項目を、今週中に着実に進めることが、6月分のレセプトを適切に提出する前提となります。
特に重要な算定項目(訪問看護物価対応料、介護職員等処遇改善加算、ベースアップ評価料、包括型訪問看護療養費、D to P with N、訪問看護医療情報連携加算、特別地域訪問看護加算、複数名訪問看護加算等)について、自ステーションの該当状況と算定準備を、改めて点検していただきたいと考えます。
施行直後は、必ず何らかの混乱や見落としが発生します。完璧を目指すのではなく、優先順位を持って対応し、失敗を早期に修正し、専門家や同業者を頼り、スタッフを支えながら、長期的な視点を保つことが、経営者として求められる姿勢です。
7月10日のレセプト提出までの残り37日間。この時期の地道な対応が、6月以降の経営の安定度を大きく左右します。HokanPress編集部では、施行後の制度運用について、引き続き最新情報を発信してまいります。
訪問看護経営者・管理者の皆様の確実な制度対応を、心から応援しています。