訪問看護師の給料は、病院勤務の看護師と比べて実際のところどうなのか。本記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の最新データをもとに、訪問看護師の給料相場を地域別・経験年数別に詳しく解説する。オンコール手当や車両手当といった訪問看護特有の手当の実態、そして年収アップの具体的な方法まで、転職を検討中の看護師に必要な情報を網羅した。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の平均年収は約508万円(平均年齢40.7歳)。一方、訪問看護ステーションに勤務する看護師の平均年収は約480万〜520万円とされており、病院勤務とほぼ同水準か、やや上回る傾向がある。
月収ベースで見ると以下のようになる。
| 項目 | 訪問看護師 | 病院勤務看護師 | | --- | --- | --- | | 基本給(月額) | 26万〜30万円 | 25万〜29万円 | | 賞与(年間) | 60万〜80万円 | 70万〜90万円 | | 年収目安 | 480万〜520万円 | 480万〜530万円 |
注目すべきは賞与の差だ。病院勤務のほうがやや高い傾向にあるが、訪問看護は後述する各種手当が上乗せされるため、実質的な手取りでは逆転するケースも珍しくない。
訪問看護師の給与明細には、病院勤務にはない独自の手当が並ぶ。
夜間・休日の緊急対応待機に対する手当。1回あたり1,000〜3,000円が相場で、月に4〜8回の待機を担当する場合、月額で8,000〜24,000円の上乗せとなる。日本訪問看護財団の調査では、ステーションの約85パーセントがオンコール手当を支給している。
自宅から利用者宅へ直接向かう「直行直帰」を認めるステーションでは、通勤時間の削減分を手当として支給する場合がある。月額3,000〜5,000円程度が一般的だ。
自家用車を業務使用する場合の車両手当は月額5,000〜15,000円。加えてガソリン代が1キロメートルあたり15〜20円で実費精算されるケースが多い。当社編集部の看護師によると「車両手当とガソリン代を合わせると、月に2万円近くになることもある」という。
これらの手当を合算すると、月額2万〜5万円の上乗せになる。年間では24万〜60万円に相当し、基本給だけでは見えない訪問看護師の実質収入を押し上げている。
同じ訪問看護師でも、勤務地域によって給料水準は大きく異なる。
| 地域 | 常勤月収(税込) | 年収目安 | 特徴 | | --- | --- | --- | --- | | 東京23区 | 32万〜38万円 | 520万〜600万円 | 求人競争が激しく給与水準が高い | | 大阪市 | 29万〜34万円 | 480万〜550万円 | 東京に次ぐ水準、ステーション数も多い | | 名古屋市 | 28万〜33万円 | 460万〜530万円 | 自動車通勤が前提、車両手当が手厚い | | 地方都市(人口20万人) | 25万〜30万円 | 400万〜480万円 | 生活費が低いため実質的な余裕は都市部と同等 | | 過疎地域 | 27万〜32万円 | 440万〜520万円 | 人材不足で好条件の求人が出やすい |
東京23区と地方都市では年収にして最大100万〜120万円の差が出る。ただし、家賃や物価を考慮した「可処分所得」で比較すると、その差は大幅に縮まる。
| 経験年数 | 平均年収 | 月収目安 | | --- | --- | --- | | 1〜3年(新人) | 380万〜420万円 | 25万〜28万円 | | 4〜7年(中堅) | 440万〜500万円 | 28万〜32万円 | | 8〜12年(ベテラン) | 500万〜560万円 | 32万〜36万円 | | 13年以上(管理者候補) | 540万〜620万円 | 35万〜40万円 |
訪問看護では経験4年目以降の伸びが顕著だ。一人で判断・対応できる場面が増え、担当件数が増加することで実績評価が上がりやすい。病院勤務では年功序列の傾向が強いが、訪問看護ではスキルと成果が比較的早く給与に反映される点は大きな違いといえる。
非常勤(パート)の場合、時給は1,500〜2,200円が相場。週3日・1日5時間勤務であれば月収は約10万〜14万円となる。子育て中の看護師が「午前中だけ訪問看護」という働き方を選ぶケースは増えており、時給単価の高さは訪問看護の大きな魅力だ。
日本看護協会の認定資格を持つ訪問看護師には、月額1万〜3万円の資格手当を支給するステーションが多い。特に皮膚・排泄ケア認定看護師や緩和ケア認定看護師は訪問看護の現場ニーズが高く、資格手当に加えて指名依頼が増えることで実質的な評価向上につながる。
取得にかかる費用は100万〜200万円程度だが、奨学金制度や勤務先の補助制度を活用すれば負担を大幅に軽減できる。
訪問看護ステーションの管理者(所長)になると、年収は100万〜150万円上がるのが一般的だ。管理者手当として月額5万〜10万円が加算される。
管理者に求められるのは、看護スキルだけではない。スタッフのシフト管理、利用者の獲得、ケアマネジャーとの連携、経営数値の把握といったマネジメント能力が必須となる。
最も大きな収入アップが見込めるのは自ら開業する道だ。訪問看護ステーションの開設には看護師2.5人以上の配置基準を満たす必要があるが、初期投資は他の医療施設と比較して低く、500万〜1,000万円程度で開業可能とされる。
軌道に乗れば経営者として年収800万〜1,200万円も視野に入る。ただし、経営リスクも伴うため、まずは管理者として経験を積んでから検討するのが現実的だろう。
給料だけでなく、働き方との相性も重要だ。訪問看護で長く活躍している看護師には、以下の特徴が共通して見られる。
当社編集部の看護師は「病棟で感じていた流れ作業感がなくなり、一人ひとりとじっくり向き合える充実感がある」と語る。
訪問看護師の給料は、全国平均で年収480万〜520万円。病院勤務とほぼ同水準だが、オンコール手当・車両手当などを加味すると実質的にはやや上回ることが多い。地域別では東京と地方で最大120万円の差があるものの、生活費を考慮すれば大きな差にはならない。
年収アップを目指すなら、認定看護師資格の取得(年収+20万〜40万円)、管理者へのキャリアアップ(年収+100万〜150万円)、そして将来的には開業という選択肢がある。
給料だけでなく「利用者一人ひとりと向き合える」「直行直帰で時間に融通が利く」といった働き方の魅力も含めて、訪問看護への転職を検討してみてほしい。