新人看護師として働き始めて、半年から1年が経つ頃。「もう辞めたい」「自分には向いていないかもしれない」——そんなふうに感じていらっしゃる方は、きっと少なくないと思います。日本看護協会の調査でも、新卒看護師の離職率は約8.8パーセント。決してあなただけではないんですよ。
私自身も新人時代、夜勤明けに病院の駐車場で泣いていたことが何度もあります。今振り返ると、あの時間も今の自分につながっているのですが、当時は本当に出口が見えませんでしたね。今、同じように悩まれている方に、いくつかお伝えしたいことがあります。
まず最初にお伝えしたいのは、「辞めたい」と感じている自分を、決して責めないでほしいということです。
新人看護師の1年目は、医療現場のリアリティショックが最も大きい時期です。学校で学んだ看護の理想と、現場で求められるスピード感や責任の重さ。そのギャップに苦しまない人のほうが、むしろ少ないのかもしれません。
「辞めたい」と感じるのは、あなたが看護に真剣に向き合っているからこそです。どうでもよかったら、悩みもしませんよね。その気持ちを抱えていること自体が、看護師としての誠実さの証だと、私は思っています。
「辞めたい」という気持ちの中身を、少し丁寧に見つめてみていただけますか。実は「辞めたい」の中には、いろいろな感情が混ざっていることが多いのです。
例えば——
これらは全部別々の悩みで、それぞれに違う対処法があります。「辞めたい」と一言でまとめてしまう前に、何が一番辛いのかを書き出してみると、見えてくるものがありますよ。
新人時代に最も苦しいのが、同期との比較ではないでしょうか。「Aさんはもう独り立ちしているのに、自分はまだ」「Bさんは先輩に可愛がられているのに、自分は」——こういう比較が、心をすり減らしていきます。
でもね、看護師としての成長は、本当に人それぞれなのです。早く独り立ちした人が、必ずしも長く看護師を続けるわけではありません。じっくり時間をかけて学んだ人のほうが、5年後10年後に深い看護ができるようになっていることも、よくあるんですよ。
私の同期で、1年目はいつも一番遅れていた子がいました。でも10年経った今、その子は緩和ケア認定看護師として、終末期の患者さんから本当に信頼される存在になっています。あの頃の遅さは、彼女が一人ひとりと丁寧に向き合う力につながっていたんですね。
すぐに辞める決断をされる前に、いくつか試していただきたいことがあります。
プリセプターでなくても構いません。話しやすい先輩、優しいと感じる先輩。誰か一人でも、「この人なら話せる」という方がいたら、思い切って打ち明けてみてください。多くの先輩は、新人時代に同じような壁にぶつかっています。
同じ病院でも、部署が変わると人間関係も業務内容もまったく違います。今の部署が合わないだけかもしれません。看護師長や教育担当者に「部署異動の可能性はありますか」と相談されるのも、ひとつの選択肢です。
「心療内科」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、不眠や食欲不振、動悸、強い不安が続いているなら、専門家の力を借りることをお勧めします。早めに対処することで、深刻なうつ状態になる前に回復できることが多いです。
退職届を出す前に、休職という選択肢があることも知っておいてください。1〜3か月の休職で心身が回復し、復職して長く働いている方もたくさんいらっしゃいます。
ここまでいろいろ試してみても、それでも続けるのが難しいと感じられたら、退職という選択肢を取ることは決して負けではないんですよ。
看護師の仕事は、心身ともに健やかでなければ続けられません。自分を犠牲にして続けて、ある日突然倒れてしまうよりも、一度離れて態勢を整えてから戻ってくるほうが、長い人生では正解になることもあります。
実際、新卒で退職して、数年後に別の病院で看護師として再出発し、輝いている方を私もたくさん知っています。一度離れたから見えるものがあり、戻ってきた看護にはより深みが出るのです。
新人看護師の1年目は、本当に大変な時期です。「辞めたい」と感じることは、決して恥ずかしいことでも弱いことでもありません。むしろ、真剣に看護と向き合っている証だと思っています。
一人で抱え込まず、誰かに話してください。それが家族でも、同期でも、先輩でも、心療内科の先生でも、誰でもいいんです。声に出すだけで、見える景色が少し変わることがあります。
そして、どんな選択をされたとしても、あなたが看護師を志した気持ちは、決して無駄にはなりません。続ける人も、一度離れる人も、別の道を選ぶ人も、すべての選択に意味があります。あなたが今、どんな道を選ばれても、私はその選択を尊重したいと、心から思っています。