「訪問看護を頼みたいのですが、どこに電話すればいいのでしょうか」。当メディアにも、そうしたご質問が届きます。
訪問看護の必要性は感じている。けれど誰に相談し、何から始めればよいのか分からない。制度の入口が見えにくいことが、必要な支援にたどり着けない理由になっています。
相談先は、その方の状況によって変わります。今回は利用開始までの流れを、5つのステップで整理してお届けします。ご本人にもご家族にも、そのまま使っていただける手順です。
出発点は、相談先を見極めることです。いまの状況によって、最初に連絡すべき相手が変わります。
介護保険のサービスをすでに利用している方は、担当のケアマネジャーが最初の窓口です。訪問看護を含めたケアプラン全体を調整してくれます。
現在入院中の方は、病院の退院支援室や地域連携室に相談してください。医療ソーシャルワーカーや退院調整看護師が、退院後の在宅サービスを手配します。当メディアでお伝えしたとおり、病院は入院早期から退院後の準備を始めます。「退院後も自宅で医療的なケアが必要そうだ」と感じたら、早めに伝えることが大切です。
通院しているかかりつけ医がいる方は、診察のときに相談してみてください。訪問看護には医師の指示書が必要になるため、いずれ主治医の関与は避けられません。
そして、どこにもかかっていない、誰に聞けばよいか分からないという方。その場合は地域包括支援センターが入口になります。お住まいの市区町村ごとに設置された高齢者の総合相談窓口で、無料で相談できます。介護保険の申請から、地域のサービスの紹介まで対応してくれます。
訪問看護ステーションに直接電話しても構いません。多くのステーションが相談を受け付けており、必要な手続きを案内してくれます。
相談すると、次に決まるのが保険の種類です。
訪問看護には、介護保険を使う場合と医療保険を使う場合があります。要介護または要支援の認定を受けている方は、原則として介護保険が優先されます。認定を受けていない方や、末期のがん、難病など一定の状態にある方は医療保険を使います。
この判断は、ご本人がするものではありません。主治医やケアマネジャーが、状態と制度に照らして決めます。詳しくは当メディアの保険の使い分けに関する記事をご覧ください。
介護保険を使う場合で、まだ認定を受けていなければ、市区町村の窓口で要介護認定の申請が必要になります。申請から認定まで、通常は1か月ほどかかります。この期間を見込んで動き始めることが大切です。
訪問看護を始めるうえで、欠かせない手続きがあります。主治医による訪問看護指示書の交付です。
法令上、訪問看護は主治医の指示を文書で受けなければ提供できません。どれほど必要性が明らかでも、この書類がなければ訪問は始まらないのです。有効期間は最長6か月で、期限が来れば更新が必要になります。
かかりつけ医がいる方は、その医師に依頼します。いない場合は、まず主治医を決めることから始まります。地域包括支援センターやケアマネジャーが、在宅医療に対応している医師を紹介してくれます。
指示書の交付には、少し時間がかかることもあります。医師に訪問看護の必要性が十分に伝わっていない場合や、しばらく受診していない場合です。ご本人の自宅での様子や困りごとを、具体的に伝えることが助けになります。「病院の診察室で見える姿と、家での生活は違う」という視点を伝えると、必要性が理解されやすくなります。
次に、どのステーションに依頼するかを決めます。
多くの場合、ケアマネジャーや病院の退院支援室が候補を提案してくれます。地域にどんなステーションがあるかを把握しているためです。もちろん、ご自分で探して指定することもできます。
選ぶときに確認しておきたい点を挙げます。24時間の対応をしているか。夜間や休日に連絡できる体制があるかは、在宅療養の安心感を大きく左右します。必要な医療的ケアに対応できるか。人工呼吸器の管理、点滴、褥瘡の処置、緩和ケアなど、必要なケアの内容を伝えて確認してください。精神科や小児など、専門性が必要な場合も同様です。そして、自宅がそのステーションの対応エリアに入っているかも重要です。
依頼先が決まったら、契約と初回の訪問へ進みます。
まずステーションの担当者が自宅を訪れ、状態や生活の様子、ご希望を伺います。そのうえで契約を結びます。契約の際には、料金の説明、緊急時の連絡方法、個人情報の取り扱いなどが説明されます。交通費など保険の対象外となる実費が発生する場合もありますので、この段階で確認しておきましょう。
契約後、看護師が訪問看護計画書を作成します。医師の指示に基づき、何を目標に、どんなケアを、どの頻度で行うかを定めたものです。介護保険の場合は、ケアマネジャーが作るケアプランにも位置づけられます。
そして、訪問が始まります。ここまでの期間は、状況によって変わります。介護保険の認定から始める場合は1〜2か月、すでに認定があり指示書もすぐ出る場合は1〜2週間ほどが目安です。急を要する場合は、その旨を相談先に伝えてください。
利用をためらう理由として、費用の不安を挙げる方は少なくありません。
訪問看護の自己負担は、保険の種類と所得に応じて1割から3割です。当メディアの費用に関する記事で詳しくお伝えしていますが、多くの方が想像より抑えられた金額で利用しています。
さらに負担を軽くする仕組みもあります。医療費が高額になった場合の高額療養費、介護保険の高額介護サービス費。指定難病や自立支援医療など、公費の助成を受けられる場合もあります。生活保護を受けている方は、医療扶助の対象です。
費用が心配なときは、遠慮せずに相談先へ伝えてください。使える制度を一緒に探してくれます。
訪問看護は、医師の指示とケアプランという二つの手続きを経て始まります。書類や制度の話が並ぶと、難しく感じられるかもしれません。
けれど、ご本人やご家族がすべてを理解する必要はありません。必要なのは、最初の一歩を踏み出すことだけです。ケアマネジャーがいるならその方に、入院中なら病院の相談室に、どこにもかかっていないなら地域包括支援センターに。電話を一本かければ、そこから先は専門職が動いてくれます。
「まだ大丈夫」と我慢して、状態が悪化してから慌てて動くケースを、私たちは数多く見てきました。通院が負担になってきた、家での医療的なケアに不安がある、退院後の生活が心配。そう感じた時点が、相談を始めるよい機会です。訪問看護は、住み慣れた家での暮らしを支えるための仕組みです。使えるものは、遠慮なく使ってください。