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訪問看護師の年収は549万円——病院より高いのか、低いのか|日本看護協会調査で読む「夜勤手当のない給与」の中身と、オンコール1回2,233円の現実

未希 · 2026年9月6日
訪問看護師の年収は平均549万8,716円。日本看護協会の2024年度調査の数字です。病院より高いという話も、夜勤がないから低いという話も、どちらも聞きます。どちらが本当なのでしょうか。基本給、手当、賞与、オンコール、時間外。給与明細の項目ごとに調査の数字を並べ、病院から訪問看護へ移るときに何が増えて何が減るのかを、私自身の経験も交えて整理します。2026年に入った処遇改善加算の話も含めます。

訪問看護の求人を見ていると、月給40万円という数字が目に入ります。病棟で夜勤をしていた頃の給与明細と比べて、多いのか少ないのか。私が急性期病院から訪問看護に移ったとき、一番わからなかったのがそこでした。

数字を並べてみます。日本看護協会が2025年6月に公表した「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」では、訪問看護ステーションに正規雇用でフルタイム勤務する看護職員の2024年の年収は平均549万8,716円でした。一番多い層は500万円から600万円未満で、24.8%です。

この数字を、よく聞かれる質問に沿って読み解いていきます。

Q. 549万円は、病院より高いのですか

同じ調査の病院勤務者と比べると、年収で約26万円、病院のほうが高くなっています。ただし基本給の月額はほぼ同じで、差は約3,000円しかありません。税込の給与総額で月2.6万円ほど病院が上回り、それが年収の差になっています。

差の正体は夜勤手当です。病院は夜勤があり、訪問看護は日勤が中心です。基本給が同じで、夜勤手当の分だけ病院が高い。それが調査の示す構造です。

一方で、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、看護師全体の平均年収は524万7,200円でした。この数字と比べれば、訪問看護の549万円は上回っています。ただし、この二つは調査の対象も方法も異なるため、単純に並べて「訪問看護のほうが高い」とは言えません。日本看護協会の調査は協会の会員が中心で、厚生労働省の調査は事業所の規模や地域を広く含みます。

私の実感を言えば、病棟で月8回の夜勤をしていた頃と比べると、訪問看護に移った最初の年は年収が下がりました。夜勤手当がなくなった分です。そのあと訪問件数とオンコールに慣れて、手当が増え、ほぼ元の水準に戻りました。病院より高いか低いかは、その人が病院でどれだけ夜勤をしていたかで決まります。

Q. 夜勤がないのに、なぜ月給40万円の求人があるのですか

訪問看護の給与は、基本給に手当を重ねて作られています。訪問件数に応じたインセンティブ、オンコールの待機手当、緊急訪問の出動手当、資格手当。求人票の月給40万円は、こうした手当を一定の件数と回数で見込んだ金額であることが多いです。

私が転職の面接で聞いたのは、月給の内訳でした。基本給はいくらで、何件訪問すればその月給になるのか。オンコールは月に何回で、待機だけの場合と出動した場合で手当はどう違うのか。

これを聞かずに入職すると、最初の数か月は件数が少なくて月給が届かず、慣れて件数が増えたら今度は身体がきつくなる、ということが起きます。

Q. オンコール手当は、いくらもらえますか

日本看護協会の調査では、訪問看護ステーション勤務者がオンコール待機をした場合、待機のみで出動がなかった1回あたりの手当は平均2,233円でした。

2,233円で一晩、電話が鳴るかもしれない状態で過ごします。出動があれば別に緊急訪問の手当がつき、全国訪問看護事業協会の調査では緊急訪問に報酬を払っている事業所が約96%です。

私がオンコールを持ち始めた頃、一番つらかったのは手当の額ではなく、鳴らない電話を気にして眠りが浅くなることでした。月に6回の待機で13,000円ほど。その金額で眠りの質が落ちることを、どう考えるか。これは人によって答えが違います。当メディアでオンコールの構造を扱った記事では、待機回数を減らす事業所の工夫を紹介しました。給与を比べるときは、オンコールの回数まで含めて比べたほうがいいと思います。

Q. 残業はありますか

同じ調査で、訪問看護ステーション勤務者の月の時間外労働は平均15.8時間でした。病院勤務者の15.5時間とほとんど同じです。

訪問看護の残業は、訪問そのものより記録と連絡で発生します。訪問先で急変があった日、主治医やケアマネジャーへの報告が重なった日、月末の計画書と報告書の作成。当メディアで記録の負担を扱った際にも書きましたが、記録を訪問先で終わらせる仕組みがある事業所と、事務所に戻って書く事業所では、残業の量がまったく違います。

時間外手当がきちんと支払われているかも確認したいところです。調査では、病院勤務者で時間外勤務を申請した時間が9.3時間、手当が支払われた時間が9.1時間と、実際の労働時間15.5時間との差があります。訪問看護でも同じことが起きていないか、面接で聞いてもよい質問です。

Q. 資格を取れば、給与は上がりますか

専門看護師の手当を支給している訪問看護ステーションは39.4%、認定看護師の手当は44.3%です。手当がある事業所での平均額は、専門看護師で月19,615円、認定看護師で月13,574円でした。

つまり半数以上の事業所には資格手当がありません。訪問看護で資格を取っても、手当として給与に反映されるかは事業所によります。訪問看護の給与を左右するのは、資格より訪問件数とオンコールの回数です。この構造を知らずに資格取得を年収アップの手段と考えると、期待とずれます。

資格が効くのは、管理者や機能強化型の要件に関わる場面です。当メディアで機能強化型の要件を扱った際に書いたとおり、事業所の加算取得に資格が貢献すれば、その分を給与に反映する交渉の材料にはなります。

Q. 2026年の処遇改善で、給与は上がりましたか

2026年度の臨時介護報酬改定で、訪問看護にも処遇改善等加算が1.8%設定され、6月から施行されました。訪問介護には最大28.7%の加算がついたのと比べると、小さな数字です。

これがどのくらいの金額になるか、編集部の試算で確かめます。訪問看護の1事業所あたり月商は347.6万円。仮にそのすべてが介護保険の収入だったとしても、1.8%は月6.3万円です。1事業所の看護職員は平均5.8人ですから、一人あたり月1万円程度。実際には医療保険の収入が含まれるため、これより少なくなります。

医療保険の側にはベースアップ評価料があり、当メディアで報告書の提出を扱った記事に書いたとおり、そちらは事業所ごとに配分が異なります。日本看護協会の調査では、ベースアップ評価料を算定する事業所の6割以上が毎月の手当で引き上げ、基本給を上げたのは3割弱でした。

日本看護協会は2027年度介護報酬改定に向けて、訪問看護の看護職員の処遇改善を急務として要望しています。1.8%で終わるのか、次の改定で上積みされるのか。いま訪問看護で働く私たちの給与に直接関わる論点です。

Q. 結局、訪問看護の年収は何で決まるのですか

ここまでの数字をまとめると、訪問看護の年収を決めるのは四つです。

基本給。病院とほぼ同じで、事業所間の差は小さい。 訪問件数。インセンティブがある事業所では、件数が給与に直結する。 オンコールの回数と出動。待機1回2,233円、出動すれば別途手当。 賞与。事業所の経営状態に左右される。

このうち自分で調整できるのは、件数とオンコールです。だから訪問看護の年収は、病院より高いとも低いとも言えません。どれだけ訪問し、どれだけ待機するかで、同じ事業所の中でも年収が100万円違うことがあります。

私は今、月の訪問件数を病棟時代の夜勤の代わりだと思っています。夜勤がなくなった分の収入を、日中の件数で取り戻す。その代わり、夜は自宅で眠れる日が増えました。549万円という平均の数字の中身は、そういう一人ひとりの選択の積み重ねです。

求人を見るときは、月給の額より内訳を聞いてください。それが訪問看護の年収を正しく知る、いちばん確かな方法です。

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