HokanPress

訪問看護専門メディア

ログイン無料登録
TOP看護訪問看護医療制度医療一般特集インタビュー編集部
キャリア診断給与診断求人
ニュースレター

訪問看護の“変化”を、毎朝メールで。

診療報酬・経営・現場の新着を編集部が厳選。開業・経営判断に効く情報を、無料でメールにお届けします。いつでも解除OK。

登録すると確認メールが届きます。いつでも配信解除できます。

HokanPress

訪問看護師・経営者のための専門情報メディア。経営・現場・制度の実践情報を発信します。

カテゴリ

  • 看護
  • 訪問看護
  • 医療制度
  • 医療一般
  • 編集部
  • キャリア診断
  • 給与診断
  • タグ一覧

サイト情報

  • サイトについて
  • お問い合わせ
  • 広告掲載

法的情報

  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

© 2026 HokanPress. All rights reserved.

HokanPress

電子カルテ100%時代に、訪問看護は「医療機関ではない」——それでも、この流れの外にはいられない|2030年へ進む標準型電子カルテと情報共有基盤で、訪問看護は最大の受益者にも、取り残される側にもなる

宮木 · 2026年7月28日
2025年12月の医療法改正で、2030年末までに電子カルテの普及率をほぼ100%にすることが法律に明記されました。国は標準型電子カルテを2026年度中に完成させ、全国の医療情報を一つの基盤でつなごうとしています。これは病院・診療所の話であり、訪問看護ステーションは「医療機関」ではありません。しかし、訪問看護はこの流れの外にはいられない——最大の受益者にも、取り残される側にもなりうるのです。その理由と、経営者が備えるべきことを論じます。

2025年12月5日、医療法などの一部を改正する法律が成立した。その中に、医療DXの推進として、注目すべき一文が盛り込まれている。2030年12月31日までに、電子カルテの普及率を、ほぼ100%にする。この目標が、法律に明記されたのだ。

国は、この目標に向けて、「標準型電子カルテ」を2026年度中に完成させ、全国の医療情報を、一つの基盤の上でつなごうとしている。医療のあり方を根本から変える、大きな地殻変動が始まっている。

ただし、これは病院や診療所の話だ。訪問看護ステーションは、法律上、「医療機関」ではない。だから、この電子カルテの普及目標や、標準型電子カルテの、直接の対象ではない。「では、訪問看護には関係のない話か」と言えば、まったくそうではない。むしろ訪問看護は、この流れの中で、最も大きな恩恵を受けられる立場であると同時に、最も取り残されやすい立場でもある。本稿では、その理由と、経営者がいま備えるべきことを論じたい。

国が法律で決めた「2030年、電子カルテほぼ100%」

まず、いま国が進めていることを、正確に押さえておく。

前述のとおり、2025年12月に成立した改正法で、2030年末までに電子カルテの普及率をほぼ100%にすることが、明記された。関連する資料では、診療所で8割以上、医療機関全体で9割以上、といった目標も示されている。これは、単に紙のカルテを電子に置き換える、という話ではない。全国の医療情報を共有できる基盤を築くための、その土台としての電子カルテ、という位置づけである。

この普及を後押しする中核が、「標準型電子カルテ」だ。これは、国が機能やセキュリティの要件、そして共通のデータ形式を定めた、統一仕様の電子カルテである。仕様がばらばらでは、システム同士で情報を交換できない。だから、規格を揃える。標準型電子カルテは、そのための取り組みだ。

具体的な動きも進んでいる。標準型電子カルテのα版は、2025年3月から、電子カルテを導入していない医科診療所を対象に、モデル事業が始まっている。2026年3月31日には、厚生労働省が、中小病院向けと医科診療所向けの標準仕様書の1.0版を公表した。病院については標準仕様に民間製品が準拠する形で、診療所については国が用意する標準型電子カルテで、それぞれ標準化を進める。医療DXは、「制度を検討する段階」から、「実際に製品を選び、導入する段階」へと移りつつある。

目的は、「情報がつながる」ことにある

ここで、医療DXの核心を押さえておきたい。それは、電子化そのものではなく、情報がつながることにある。

これまで、患者の医療に関する情報は、医療機関、薬局、介護事業所、自治体などが、それぞれ個別に保存・管理してきた。いわば、情報が、あちこちに孤立して存在する「データのサイロ化」の状態だった。国が構築しようとしている「全国医療情報プラットフォーム」は、この孤立した情報を集約し、共有するための基盤である。オンライン資格確認、電子処方箋、そして電子カルテ情報共有サービス。これらが、その基盤を構成する。

とりわけ重要なのが、電子カルテ情報共有サービスだ。これは、全国の医療機関や薬局で、患者の診療情報を電子的に共有する仕組みで、2025年度中の本格稼働が目指されている。共有されるのは、健康診断結果報告書、診療情報提供書、退院時サマリーという3つの文書と、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査、処方という6つの情報だ。

これが実現すれば、患者がどの医療機関にかかっても、医師は、その人の過去の薬や検査結果、病名を、即座に確認できるようになる。救急のときも、災害のときも、正確な情報に基づいた医療が可能になる。重複した投薬を防ぎ、紹介状作成の手間も減る。医療の質と効率が、同時に上がる。それが、この基盤の狙いである。

訪問看護は「医療機関ではない」——だが、蚊帳の外ではない

さて、ここからが、訪問看護にとっての本題だ。

繰り返すが、訪問看護ステーションは、法律上、「医療機関」ではない。だから、電子カルテの普及率100%という目標も、標準型電子カルテも、直接には訪問看護を対象としていない。訪問看護ステーションが使っている記録のシステムは、「電子カルテ」と呼ばれることもあるが、これは医療機関の電子カルテとは別の、民間の事業者が提供するサービスが中心である。

しかし、だからといって、訪問看護がこの流れの蚊帳の外にいる、と考えるのは、大きな誤りだ。なぜなら、訪問看護は、この情報共有の基盤から、最も大きな恩恵を受けられる立場にあるからだ。

考えてみてほしい。訪問看護は、主治医の指示書、利用者の診療情報、処方の内容、そして退院時のサマリーに、常に依存している。これらの情報がなければ、適切なケアはできない。ところが、これまで訪問看護師は、これらの情報を、FAXや紙、あるいは電話で、断片的に受け取るしかなかった。退院した利用者の情報が、なかなか手元に届かない。処方が変わったことを、後から知る。そうしたもどかしさは、現場の日常だった。

情報共有の基盤がつながれば、これが変わる。実際、国や関連する事業者の資料でも、この基盤によって「病院・在宅・訪問看護との連携がさらに推進される」こと、そして「在宅医療機関や訪問看護、薬局、介護関係者などの関係者全員が、同じ情報を素早く把握できるようになる」ことが、明記されている。全国医療情報プラットフォームの構想図には、「介護事業所」や「介護情報基盤」も、はっきりと組み込まれている。訪問看護は、介護保険サービスの一員として、この基盤の中に、確かに位置づけられているのだ。

訪問看護が直面する、二つの現実

では、訪問看護の経営者は、この流れをどう捉えるべきか。ここには、二つの現実がある。

一つ目は、機会である。情報連携が実現すれば、訪問看護の質と効率は、確実に上がる。利用者の正確な情報を、素早く把握できる。指示書を待つあいだのやきもきや、情報不足の中での判断のストレスが減る。退院した利用者の退院時サマリーを直接参照できれば、退院直後の、最も不安定な時期の訪問が、格段にスムーズになる。医療DXは、訪問看護にとって、間違いなく追い風になりうる。

二つ目は、リスクである。この基盤につながるためには、訪問看護が使う記録のシステムもまた、国の標準的な規格、すなわち共通のデータ形式や接続の仕様に、対応している必要がある。ここが、分かれ道だ。標準規格に対応したシステムを使っていれば、情報連携の輪に入れる。だが、対応しないシステムを使い続ければ、あるいは旧来のFAXと紙のやり取りにとどまり続ければ、周りの医療機関が標準化と情報共有へと進んでいく中で、訪問看護だけが、その輪から取り残されることになる。

つまり、訪問看護は、この流れに「乗る」か、「取り残される」かの、分岐点に立っている。「医療機関ではないから、関係ない」という姿勢は、この分岐点で、後者を選ぶことに等しい。

経営者が、いま備えること

では、具体的に何を備えればよいか。一気にすべてをやる必要はないが、方向を見誤らないために、四つの点を挙げておく。

第一に、自らのステーションが使っている記録システムが、医療DXの標準規格や、情報共有の基盤への対応を、今後どう進めようとしているのかを、確認することだ。システムを提供している事業者に、対応の方針を問うておく。ここが、連携の輪に入れるかどうかの、最初の分かれ目になる。

第二に、すでに始まっている基盤への接続を、着実に進めることだ。訪問看護においては、オンライン資格確認が、医療保険分について2024年12月から義務化されている。電子処方箋への対応も含め、すでに動き出している部分を、後回しにしない。

第三に、活用できる支援を把握することだ。電子カルテの普及に向けては、医療情報化支援基金や、IT導入補助金といった、補助の制度が用意されている。対象や補助率は年度によって変わるため、最新の情報を確認する必要があるが、費用の負担を軽くする手段は存在する。

第四に、セキュリティである。情報がつながるということは、それだけ、情報が漏れたときの影響も大きくなる、ということだ。利用者の医療情報という機微な個人情報を扱う以上、国が定める安全管理のガイドラインへの準拠は、これまで以上に重要になる。

この変化は、遠い制度の話ではない

国は、2030年に向けて、医療の情報を、一つにつなごうとしている。その中心にいるのは、確かに病院と診療所だ。だが、在宅で療養する人を支える訪問看護もまた、その基盤の、確かな一部である。

訪問看護は、「医療機関ではない」。しかし、それは、この変化の外にいる、ということを意味しない。むしろ、情報につながることで最も恩恵を受けられる立場であり、同時に、つながり損ねれば最も取り残されやすい立場でもある。この二面性を、正確に理解しておく必要がある。

医療DXは、どこか遠くの、制度の議論ではない。数年後、訪問看護師が、利用者の指示や診療情報を、どのように受け取り、どのように多職種と連携するのか。その日々の実務のあり方を、この流れは、静かに、しかし確実に、変えていく。医療機関のカルテが変わることは、その情報を受け取って動く訪問看護の、足元が変わることでもあるのだ。だからこそ、いまのうちから、この変化に目を向け、自らのステーションをつながる側に置いておくこと。それが、これからの訪問看護の経営に、問われている。

HokanPress — 訪問看護の今がわかるメディア